お化粧しなくてもいいよ、ミス・パープル

印刷

梗 概

お化粧しなくてもいいよ、ミス・パープル

ハイウェイ3のすぐ傍にあるさびれた田舎町、ジャンクジャンクタウン。その名前のもととなったジャンク・ディーラーの店舗を奥に、放射状に延びた埃っぽい道とそこにぽつんぽつんと建った民家が寄せ集まってできた吹き溜まりのような街。そこに住む『ぼく』は小学1年生、毎日スクールバスで通っているのだが、ある日、『ママ』が赤ちゃんを産むために、お祖母ちゃんのいる実家に帰ってしまった。その留守の間、『ママ』の弟にあたるおじさんが『ぼく』の面倒を見るために遠くの国からやってくるという。幼いころの記憶しかないが、どこか薄気味悪いその人には、例えば生きたカエルを丸呑みしたというような、気持ち悪い思い出しかない。そんな人が来る前に、スクールバスに乗り込むと、大勢の子供たちがこちらを見てくすくすと笑っている。『ぼく』はなんだか嫌われてるみたいだけど、そんなことは気にせずに、手鏡をのぞき込んで化粧に余念のないミス・パープル先生と運転手のジョー・リン・トンネルに礼儀正しく挨拶をする。後ろの席について、赤毛のブリトニーに微笑んでみるけれど、しらーっと無視される。
走り出すバス。高速道路に乗り、光速道路となり、超光速道路となろうとしてできず、消滅する。今日も学校へはたどり着かない。この街から出ることはなかなか難しいのだ。『ママ』は、きっとベビーカーを押しながら、ゆっくりと歩み去ったのだ。その姿は誰も見ていないけれど。だけどきっと、中に赤ちゃんを乗せて帰ってくる。
おじさんはテールコートにシルクハット、きっと、ざますざますな吸血鬼のような恰好をしている。まだやってこない。
ジャンク・ディーラーは、プレッシャー・パニッシャーという名前だけど、見た目はぷっくりと太った優しい声のおじさんだ。色んなものを潰してまとめて放り込んで、レアメタルやヘアメタルを楽しんでたりする。もちろん核廃棄物も。ずいぶんと重たくなって、最近では何となく薄暗く見える。
「スイングバイだな、坊主。わかるか?」
スクールバス、ブリトニーに声をかけてみる。すごく嫌な顔をされる。ミス・パープルが手鏡をこちらに向けて、
「ロリコンって、いただけないわ」
確かに『ぼく』の姿は30代に見える。高速から、光速、そして超光速、とはならず。
『ママ』は大きなおなかで横になって、だからリカンベント・トライク・タドポール。今頃はお祖母ちゃんちで、弟だか妹だかを産み落としているはず。それともあの、ショッピングカートを音ている小汚い老婆が、本当は。
「逃げずに向かってこい」
と、今では光すら逃げ出せないプレッシャー・パニッシャーが誘う。
演算過程可視化システムが冴え渡る世界、スクールバスがブラックホールでスイングバイ、超光速で消える。

文字数:1127

内容に関するアピール

一つのエラーからつながっていく物語は因果応報的なものなのかと考え、因果は巡るので、ループさせて、その流れの中で出口に向かう話を考えた。さっぱり意味が分からない。

文字数:80

課題提出者一覧