外典:プールナによる福音書

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梗 概

外典:プールナによる福音書

第1章

1:1 アインシュタインは優れた科学者だったが、預言者ではなかった。

1:2 アインシュタインはこう言った。「第三次世界大戦についてはわわからないが、第四次大戦は石と棍棒で戦うことになるだろう」

1:3 三度目の世界大戦は実際のところは、文明の水準を三百年ほど逆戻りさせる程度だった。

1:4 世界人口は三分の一になった。

1:7 衰退した世界に、父なる神は、救世主を使わした。

1:8 救世主は、年端もない少女だった。

1:10 救世主は数々の奇跡をおこしてみせた。

1:17 おおむね順調に信徒をあつめていった。

1:27 救世主は生きるための知恵を説いて回った。

1:29 救世主は言った。「人は幻に包まれて生きています。惑わされず、確かな道を歩いていかなくてはなりません」

1:30 だがその言葉を真摯に受け止めるものは、決して多くはなかった。

 

第2章

2:1 奇跡は噂をよび、人々の関心を集めた。

2:4 救世主はラジオにゲスト出演したりもした。

2:16 各地から牧師、神学者、科学者が集まった。

2:17 奇跡についてあらゆる角度から検証、研究がされた。

2:18 奇跡についての研究は工学的神学と呼ばれる新しい学問領域を生み出した。

2:20 工学的神学の成果は、奇跡はいかようにも物理法則を無視できるのではなく、ある一定の法則に従っていることを明らかにした。

2:21 すなわち<無限を有限の中におさめる>

2:33 奇跡を応用する計画がいくつも立案され、審議された。

2:34 そして一つの計画が採択された。

 

第3章

3:1 いくつもの計画の中から、ひとつが採択された。

3:2 地上にすべての知を集めた図書館を作る、という計画だった。

3:12 図書館にはたった2つの本が収められていた。

3:13 1つ目の本は「ネイピアの本」と呼ばれた。

3:14 ネイピアの本の1ページにはこう記されていた。

3:15 2.71828 18284 59045 23536 02874 71352 …

3:23 ネイピアの本にはあらゆる書物のあらゆる文字列が対応づけられる。

3:24 ネイピアの本はの巻数は、全部で可算無限におよんだ。

3:25 奇跡によって、その無限の巻数は、図書館の有限の本棚に納められた。

3:28 2つ目の本は「完全なる索引の本」と呼ばれた。

3:29 完全なる索引の本はネイピアの本の索引で、 あらゆる文が索引化され、自在に索くことができる。

3:31 無限に膨らむページは、救世主の奇跡によって一冊の本に納められた。

3:32 しかもこの本はポケットに入るハンディサイズだ。

3:36 「完全なる索引の本」は大量印刷され、世界中に配られる計画だった。

3:40 昼夜休むことなく印刷機は本を刷り続けた。

3:47 計画半ばで、救世主は行方をくらませた。

3:51 即物的、冒涜的な人々に囲まれて、救世主はただ孤独だった。

 

第4章

4:55 救世主に、初めて心を許せる友人ができた。

4:56 救世主は、孤独から救われた。

 

第5章

5:1 救世主はある日、人前にひょっこりと現れた。

5:23 完全なる索引の書で、人々はいつでも繋がれるようになった。

5:38 互いが互いを些細なことで中傷し、あげつらうようになった。

5:46 計画は失敗した。

 

第7章

7:1 新たな計画が動き出した。

7:3 奇跡によって無限のメモリを有限のテープに収め、オラクル付きチューリングマシンをつくりあげた。

7:18 ほとんどの数学的命題が、コンピューターで証明ないし反証できるようになった。

7:20 デジタルディバイドが深刻になり、断絶が生まれ、人々はばらばらになっていった。

7:22 断絶は多くの争いを生んだ。

7:26 計画は失敗に終わった。

 

第10章

10:12 失われた300年を取り戻すために、あらゆる計画が立てられ、そして失敗していった。

10:14 人々が過去の歴史にとらわれるのをやめるのに、長い時間がかかった。

10:31 「人間はかつての繁栄を取り戻すことは二度とありません。しかしそれでも私たちは、この体に限りない喜びを宿して生きていくことができるのです」

10:32 その言葉を最後に、救世主は人々の前から姿を消した。

彼女についての言行録はこれにて終了になる。
彼女のその後を知るものはわたし以外にそう多くはない。
友として彼女と共にその余生を過ごせたことを、私は幸福に思う。
人類の行く末は、また次の預言者に見届けてもらいたい。

文字数:1773

内容に関するアピール

■概要

今回は、リチャード・パックのイリュージョンをSF風にしました。

実作では、梗概のような福音書風のスタイルを合間合間に挿入しつつ、救世主と福音書の書き手であるプールナの交流を描く予定です。

 

■世界観

ヨコハマ買い出し紀行のような、どこか牧歌的で、さみしさのただよう、衰退した未来世界が好きなので、

そんな世界観を踏襲しました。

 

■ストーリー(とSF要素)

構成としては、奇跡を利用した様々な計画の実行とその失敗の小話をいくつか連ねていく感じにしようと思っています。

今のところ予定しているのは以下の二エピソードを入れる予定です。

  • 超越数の索引からスマホ的な本を作る話。
  • オラクル付きコンピュータを作ってゲーデルの決定問題を肯定的に解決する話。

他のアイディアも思いつけば追加しようと思っています。

 

作中では神の奇跡がおきますが、何でもありではなくきちんとルールを設け、そしてそこからどんなことが可能なのかを論理的、科学的に推論していく…その過程をパズル感覚で楽しんでもらえたらと思っています。

 

※オラクルとは、ある種の計算問題を1ステップで解く機構だそうです。

 

■キャラクター

主人公と救世主は両方女の子にして、百合要素をいれたいと思ってます。

主人公はクール系、救世主はぽわぽわした女の子のイメージ。

 

以上、世界観と百合的なキャラクターのやりとり、それとパズル要素を含んだストーリーで読者をオモテナシいたします。

文字数:593

課題提出者一覧