菜々子、アラサー結婚チャレンジに失敗する

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梗 概

菜々子、アラサー結婚チャレンジに失敗する

「ママになってくれそうな女性が好きなんだ。バブみがあって、オギャれて──」

主人公・菜々子は母性が足りないというどうしようもない理由で恋人にフラれてしまった。
包容力があって母性に満ちた女性であることは、近未来において社会的に非常に重要な要素とされていた。
フラれた理不尽さと悔しさから彼女は、そもそもなぜ世の男性は女性に母性を求めるのかを探りはじめる。

報道系の仕事をしている菜々子は、その立場を活かして歴史を紐解いていく。
すると、ある時期から急に社会全体で女性に母性を求めるようになったことを突き止めた。
更に調べると、現政府の中心人物である厚生労働大臣・鹿島が中心となっているのではないかという疑惑が浮上する。

仕事の名目で鹿島大臣に近づいた菜々子は、彼女を生放送のテレビ番組の場に引きずり出すことに成功した。
政治家である鹿島と、報道番組のアナウンサーとしての菜々子が一対一で対峙し、公開インタビューが始まる。

菜々子は、自身が調べた成果をそれを裏付ける資料とともに鹿島に突きつけた。
「男性が女性に母性を求めるのは、政府のプログラムが発端である。
経済状況の悪化に対して主要労働力である成人男性の意識・精神が低下、労働生産性に影響していることを突き止めた政府は、
女性の母性を高めることで成人男性の精神面を支援、保護することでその措置策とする計画を立てた。
この計画と実行を指揮したのが、当時社会学の教授という立場で政府の社会安定促進委員会に参加していた、鹿島であった」

彼女は衆目の下にこの事実を暴き、社会に対して問いかけた。
「個人に求められる社会的役割を政府が規定し、知らぬうちに国民を縛り付けるようなことがあってはならないのではないか?」

菜々子の告発に応じた鹿島は「社会のため、未来の発展を考えた上での施策だ」と、その主張に真っ向から反論した。
曰く、人類は二本足で立って以来、長い歴史の上で男性と女性との間で分業が成立し、遺伝子もそれぞれに最適化されていた。
文明化に伴って現代では男女の役割に垣根がなくなった。
しかし今起きている社会的な矛盾や問題は、そのような形で遺伝子に従わず、人の行いを無理に変化させようとした弊害だと彼女は言う。
だから彼女は、200万年積み重ねた歴史に沿った形で最適化された役割を個人に与え、最適化された個人が集団となった最適な社会を作るようにした。

菜々子は鹿島から逆に問いかけられる。
あなたが本当にしたいことは「『個人を規範する社会』を作り上げた政府の告発」なのか?
それとも「『自分に足りない性格こそが社会に求められている』ことに納得できないという反発」ではないのか?

フラれた私怨が発端であった菜々子は詰まるが、ふと思いついた疑問を鹿島にぶつける。
「あなたは、このような人間の可能性を狭めるような規範の中で生きていくことを辛いと感じないのですか?」

「いいえ。だって、私昔から男性のことが好きではないの。だから男性に好かれたいと思わないし、そのために媚びた生き方をする必要もないのよ」
堂々といい切った鹿島は唖然とする菜々子を置いてインタビューを退席し、そのまま画面から消えていった。

文字数:1297

内容に関するアピール

テーマの「おもてなし」を「エンタメ度上げろ」と解釈したので、一言で特徴を言い表せて3行で内容を説明できるわかりやすさと、テーマを流行り物にしてとっつきやすくするという方法をとりました。

「今ネットで流行ってる『ママ』『オギャる』『バブみ』といった言葉を題材でとっかかりやすさを意識してるんだけど、読んでみたら案外とSFしていたよね……」

読者にそういった感想をもってもらえたら狙い通り、という梗概です。
物語の発端からしてしょうもないので、終始「こいつはなんでそんなに必死なんだ」という雰囲気を大切にしたいです。

文字数:253

課題提出者一覧