完成稿
球
完成稿に関するアピール
想定媒体は、「モーニング」です。
目指したのは、「職業モノ」×「超常現象の不思議さ」のハイブリッドです。
今回の「球」は「取材して描いてください」という課題9で提出した完成稿に、追加取材をして、大幅に加筆したものです。青年誌を目指すにあたり、先生方から主にアドバイスいただいたのが、「新聞社のリアリティラインを上げる」「主人公の心理描写、仕草などキャラの深堀り」でした。
そこで、職業モノとしてのリアリティを上げるために、数百枚もの御神渡りに関連する資料写真を、取材させていただいた方に、ご提供いただき、取材の現場のリアリティさを追求しました。そして、前回の完成原稿では、女性の新人記者・咲山の目線でストーリーが進行していくのですが、主人公・真下の目線でストーリーが進むよう変更しました。そして、先輩記者・水田が真下に大きな影響を与え、それを10年かけて、真下自身が乗り越えていくストーリーを主軸にしています。
また、水田が土砂災害に巻き込まれるシーンですが、こちらは、2006年に長野県岡谷市で起こった豪雨災害を参考にさせていただいています。奇しくも、この原稿の執筆中の2021年8月、15年ぶりに岡谷市で再び豪雨災害があり、3名の方がお亡くなりになりました。この場をお借りして、犠牲になった方々のご冥福をお祈りいたします。
1991年の雲仙普賢岳で発生した火砕流によって、報道関係者、地元の消防団員ほか、42名が亡くなった事故など、報道関係者が取材中に命を落とすことは、稀に報道されています。その事から着想を得て、「命がけで報道を続ける意味とは」「報道の使命とは何なのか」という壮大なテーマにたどり着きました。なかなか、29ページでは描ききれていないのですが、私なりに考えた事を漫画として落とし込みました。
長野県諏訪湖の御神渡りの観察を続けている八剱神社では、300年以上途切れる事なく、毎年冬の諏訪湖のことを記録し続けています。近年は、諏訪湖の凍った様子だけではなく、その年に起こった出来事などが詳細に記録されています。今回のストーリーでは、2006年の御神渡りが回想として登場しますが、この年の八剱神社の記録には、冬季オリンピックで荒川静香選手が金メダルを取ったことや、その年の様々な農作物の出来不出来についても詳細に記録されていました。これは、同時代に生きる他者に伝えるための記録ではなく、後世の子孫に遺すための記録なのだと感じ、不思議な感動を覚えました。
新聞も記録として残す役割を持っているので、共通しているなと、追加取材をした時に感じ、「ただ、記録し、残す」ということを描けないかと思いました。
超常現象の「球」のリアリティの部分を、もう少し深堀りしたかったと思います。
1年間、ひらマンには大変お世話になりました。ここに来て、初めて漫画を完成させることができました。「漫画を完成させる」という受講当初の目的を果たすことができたので、大変嬉しく思っています。ありがとうございました。今後も描き続けたいと思います。
文字数:1256
ネーム
ネーミングライツ
ネームに関するアピール
想定媒体:アフタヌーン(講談社)
今回は、20代前半から30代前半の少し若めの青年誌をターゲットにネームを書きました。
これまで、ひらマンで書いてきたものは、「もっと年齢層が高い」と、周囲から言われてきましたが、書いている自分自身が、高い年齢層に向けて書くのが難しいなと感じていました。そこで、今回は年齢層を下げた想定読者にしています。
主人公は20代前半のフリーター。知り合いの20代の男性をイメージして書いています。特に打ち込めるものがなく、ただ流れる日々を過ごす中で、「こんな日々がずーっと続くのか」と、漠然とした無力感を抱いている人たちに、共感してもらえたらと思いました。あまりに唐突に訪れる絶望的な展開に、一筋の救いが差し込む、そんな読後感を目指しました。
どんなに絶望的でも、自分の信じられる物を、自分で見つけて抗う主人公の姿に、共感してもらえると嬉しいです。
文字数:382