作品プラン
≪快適なあの世への旅のお供 ―地獄をやり過ごすnつの方法≫ステートメント
人生が旅なら、死もまた旅、かもしれない。
「無人島に何か一つ持っていくとしたら?」という問いは、あまりにも繰り返されてきた。ロマンに加えて心理テスト的な要素もあり、誰も傷つけない体のいい話題である。しかし、今回知りたいのは、そんな嘘か本当か分からないような心理ではない。
いわば、「あの世用持ち出し袋」があったなら、あなたは何を詰め込むだろうか?
体罰を知らないゆとり世代に言わせれば、地獄の罰は度が過ぎている。これはもはや、正義を振りかざした「いじめ」。いや、それどころか、「犯罪」だ。
しかし、現世の理論など、地獄では到底、通用しない。蚊を一匹殺しただけで落ちてしまうという等活地獄では、そこにいる誰もが、殺し合いを延々と繰り返さなければならない。「どんな悪人でも殺してはならない」などという倫理観は、せいぜい生きているうちに守っておけということだ。
輪廻転生し、新たな生を受けるまで、そんな血も涙もない地獄をやり過ごす方法はないものか。これは、各々が真剣に考えなければならない。地獄絵図では一様に描かれてしまうが、死者にも多様性があるというもの。犯した罪が違えば、苦しみも、喜びも、それぞれ違うはず。
ただし、どれだけ準備しても、通用するかどうかは分からない。自己責任である。しかし、人生の最後くらい、一世一代の賭けに出たっていいだろう。悠々自適な老後生活よりも、比べものにならないほど長いであろう地獄生活。快適に過ごせるかどうかは、あなたの荷造りにかかっている。
あの世の旅をやり過ごすための術は、そっくりそのまま、各々がたった今、現世を生き抜こうとする方法と通ずるところがあるのではないだろうか。意外と、「無人島~」の問いよりも、その人の根性が露わになるかもしれない。
これは、あの世の旅を少しでも快適にしたい、そんな煩悩にまみれた誰かへの提案であるとともに、あの世を心配している暇があるなら現世を全うせよ、という自分への戒めである。
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