昨年の講座では「“謎”を解こうとする物語の作成」という課題を出しました。そのとき、主任講師の大森望氏が例に挙げたのが、フレデリック・ブラウンの「ミミズ天使」。ミステリ風の作品ですが、裏から見ると、完璧なはずのシステムにエラーが生じたため、世界が狂ってしまう寓話と読むこともできます。
あるいは、スタニスワフ・レムの短篇集『宇宙飛行士ピルクス物語』。これもシステムのバグやエラーに注目した連作で、SFというジャンルの盲点をつくような発想に満ちています。「想定外のアクシデント」をリアルに想像することは、驚きのあるストーリーを組み立てるうえでも、大きなプラスになると思います。
ただしエラーといっても、ネガティヴなものばかりではありません。生物の突然変異はDNAの複製エラーから生じるものですし、偶然のしくじりが大発見に転じるセレンディピティのようなケースもあります。SFの枠組を用いれば、コミュニケーション不全やヒューマンエラーをユーモラスに描くこともできるでしょう。「ある人のミスが別の人にはデータになる」という「失敗学」の格言(?)をもじれば、「ある人のミスが別の人にはドラマになる」――広い意味での「エラー」(失敗・錯誤・障害etc.)をモチーフに、「失敗」を恐れないスリリングな物語を構想してください。
(法月綸太郎)

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