梗 概
NELISA
深圳。
技術特区。企業アーコロジー、連結摩天楼、高層スラム。
香港上空から北を鳥瞰してみよう。紫色に曇る汚染大気の中に、壁状に連なった超高層ビルの塊が見えるはずだ。
それはサード・ミレニアムの社会主義国に現れた軍産学複合都市であり、新たなサイバーパンクの舞台である。
時は2045年。シンギュラリティを予言された時代。
ロウリーはApple社に依頼され、〈スティーヴ・ジョブズの草稿〉の捜索を行う。それはネットの片隅でまことしやかに存在を囁かれており、数々の革新的アイデアが記され、グローバル経済に再びイノベーションの嵐を吹き荒らせるという。
ロウリーはテクノロジー・ジャーナリストであり、サンノゼでスタートアップ企業の新たなプロダクトを発掘する仕事をしている。ロウリーはアントレプレナーたちの人脈を通じ、噂を調査する。
パロ・アルトで、ロウリーはブルーSIMを売るフォルクスワーゲン・バスの男から情報を得る。〈ジョブズの草稿〉は深圳にあるという。ロウリーは深圳に飛ぶ。
深圳でロウリーは〈金盾武警〉に狙われる。彼らはグレート・ファイアウォールを担う警察であり、〈ジョブズの草稿〉の情報を外に漏らさない意図を持っている。ロウリーはすんでのところで〈ブランチ〉と称する学生たちに助けられる。ロウリーは寮にかくまわれる。
〈ブランチ〉は〈金盾武警〉に対抗し、地下組織を作っている。彼らは〈ジョブズの草稿〉の場所を知っており、それは〈NELISA〉と呼ばれている。ロウリーはそこへ侵入する。
そこはイノベーションを創出するためスタートアップ企業が集積された巨大シェアオフィスである。12の超高層ビルとそれらを円環に繋ぐ空中通路によって形成され、独立したネットワークを持ち、〈金盾武警〉によって厳密に警備されている。最も大きなタワーの頂点に〈NELISA〉はある。
辿り着いた場所にあったのは巨大なスーパーコンピューター。〈NELISA〉はAIであり、ジョブズの人格を再現するべく中国政府が保有するニューラルネットワークだった。独自開発ニューロチップで構成され、世界中のあらゆる市場情報をインプットし、市場の求める新たな欲望を予測する機能を持っていた。そのアウトプットは深圳のスタートアップによって利用され、今まさに世界を席巻していたのだ。
文字数:955
内容に関するアピール
「ギブスンて最高にクールだな」という思いと「ジョブズ神話もクールだな」という思いと「深圳てサイバーパンクだよな」という思いが合体した小説です。
クライマックスならバトルシーンも要るのではないかと思い、情報警察と戦わせることにしました。ガジェットも、2017年の想像力の延長線で数多く登場させられればと思います。
深圳には行ったことがないので、完全にチバシティです。社会主義国の作った最強の対資本主義経済兵器っぽく書くつもりです。
”NELISA”は”neuron” + “LISA”(ジョブズの娘の名前でありApple社初期の製品名) です。もっとうまい造語あったらアドバイス下さい。
文字数:282