梗 概
ろくでなしの愛
ジャクリーンとメアリーは五歳違いの姉妹である。ジャクリーンはロボット工学の若き権威。メアリーは世間に名を馳せる名探偵。姉妹は順風満帆、傷ひとつない生活を送っていた。
しかしそこにシャーロットという女性がやってきて事態は急変する。「メアリー、貴方は本当にメアリーなの?」驚愕の声と共に告げられたのは、メアリーが偽物ではないかという疑惑であった。
ストーカーと紛う程、執拗にメアリーと接触を図ろうとするシャーロット。ジャクリーンは変化した日常を眺めながら、ふと昔の事を思い出す。
数年前に、メアリーは死んでいる。ジャクリーンが殺してしまったのだ。メアリーは幼い頃から探偵に憧れ、よく自らの活躍を夢想しては優しい姉に語ったものだ。その話を聞きながら、ジャクリーンもまた自らが殺人を犯す夢を見た。ジャクリーンに良心はなく、妹を殺した際も大した感慨はなかった。「姉さん貴方が犯人だったのね」そう告げられたから、殺すしかなかっただけだ。
現在存在するメアリーはロボットである。ジャクリーンは自分が悪党であることは知っていたし、メアリーが世間一般で言う正義であることも知っていた。悪には正義が必要であるからして、ジャクリーンはメアリーを生き返らせる必要ができてしまった。要は少し、殺人に張り合いが欲しくなったのだ。ジャクリーンはまずを持って顔を似せ、身体は服を着せることにしたためそれほど完璧には仕上げなかった。記憶回路はわずかな不正確さを持って完成させた。人間であったメアリーは記憶力が悪く、思い出すらもよく記憶違いをしていたからだ。返す言葉は生意気さを感じさせるように調整し、声は滑らかさを重視した。探偵になりたいと言っていた妹のために、“探偵”になるための情報処理システムも搭載した。
脳には思い出を仕込み、外見は類似点を大切にし、同質の声、同様の思考も搭載した。姉であるジャクリーンが“妹”と認識するならばロボットの“メアリー”は“妹”のはずである。けれどシャーロットはメアリーがメアリーじゃないという。ジャクリーンは完璧主義でプライドも高い。自らが完璧と思うまでに仕上げた愛する妹を傷つけられて黙っていられるはずがない。
ジャクリーンはとうとうシャーロットを殺し、あぁ清々しいとため息をつく。傍らでその道行を見ていたメアリーが搭載された情報処理システムを使用して現場検証を行う。「姉さん貴方が犯人ね」こちらを指差して笑うメアリー。ジャクリーンは「さすが私の妹」とシャーロットの血にまみれた両手で妹を抱きしめるのだった。
文字数:1051
内容に関するアピール
視点は終始、姉であるジャクリーンを予定しています。
現時点で若干想定がホラー寄りになっていますがロボット系の情報を集め、SF寄りに近付けたいです。
文章としては前回実作での説明文をセリフでしてしまったので、今回は地の文を強化していきたいです。あと姉の異常さをちゃんと出せるようにしたい。クライマックスの驚きは『人間だった妹と、ロボットである妹が同じセリフをいう=やっぱり私の妹』と姉が再確認大満足というシーンに表現できるよう、そこまでの構成を改めて精査します。
ジャクリーンなりの妹への愛、シャーロットとメアリーが友達以上、恋人未満ぐらいの関係性だったというのもストーリーに入れられたらと思います。
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