梗 概
HOUSE
4人の男女がある住宅街の一軒家で目を覚ます。
全員ここへ来た記憶がなく、自分の名前もわからない。腕には7桁の番号が彫られており、主人公は0065701と書かれた男(便宜上、末尾をとって1番と呼ばれる)である。
リビングに書かれた「鍵を探し、1時間以内にこの家から脱出せよ」の指令の通り、4人は脱出を試みる。しかし出口は硬く閉ざされており、鍵を探さなければ外には出られないようだ。
【1周目】
「無理に脱出した者は死ぬ」のルールの通り、窓を割って脱出を試みた0065706(6番)は目の前で死んだ。「制限時間が過ぎれば全員死ぬ」の信憑性が高まり、残された3人は脱出の鍵を探す。しかし鍵は見つからず1時間のリミット後、3人は6番と同様苦痛の中で死ぬ。
【2周目】
目を覚ますと4人はまた同じ家の中にいた。1周目で死んだはずの6番まで生き返っている。訳がわからないまま、脱出のため再び家の中を探索する。
バスルームの浴槽の中に、老婆の死体を発見した。状況から見るに、犯人はこの中にいるらしい。外に出るための鍵が何なのかはわからないが、老婆の死がこの不可解な状況のヒントとなっているようだ。4人は犯人を特定することにした。
寝室で老婆の日記を発見する。日記には双子の兄弟との揉め事の詳細が記されていた。6番と7番(0065707)は瓜二つであるから双子だろうと推測されるが、当人達にはその記憶もない。探索を続けるがリミットがきて再び4人は絶命する。
【3周目】
9番(0065709)は唯一の女性である。おそらく双子が犯人であると断定した9番は、1番に自分と手を組み、殺人鬼である双子の目的を暴こうともちかける。
しかし1番は、自身の身体的特徴や所持品から、自分が老婆を殺したのではないかと疑い始める。しかし自分が犯人であっても、やはり記憶がなく鍵に心当たりがない。
【4周目】
少なくとも3時間が経っているはずなのに、生理現象を催さない。これ自体が夢ではないか、現実ではなく肉体がない世界なのではないかと仮定する。自分達に身体がないのなら、老婆の死体は何なのか。4人は浴槽を調べ始める。排水溝の中に玄関の鍵を見つけ、無事に外へ出ることができた。
4周目を終えたところで1番は目を覚ます。
現実世界は6500年の未来。人間は自然妊娠が困難となり、人工的な培養によって殖えることが主流となっていた。腕のシリアルナンバーは培養場での出荷番号。21歳になると、出荷前の適正試験を受けさせられ、その結果により宇宙のあらゆる場所へ配属されることになっていた。芳しいとはいえない成績に終わった4人は、開拓地へ送り出されることが決まった。
夢に出てきた一軒家は、ランダムに出題されるシミュレーションの一つであり、かつて失われた星の片田舎の風景だった。出荷される彼らを、施設内の教育用ホログラムが見送っていた。その姿は浴槽で死んでいた老婆だった。
文字数:1195
内容に関するアピール
本作を一言で表すなら「脱出ゲームSF」です。脱出ゲームに限らず、ゲームの一周目を終えた後の「こんなルールだと最初からわかってたら、もっと先まで進めたのに!」という憤りを小説で表現できないかと思いました。
適性試験のシミュレーションの中で、主人公達は「思い出すことさえできれば、自分は何者かであるはずだ」と思い込み、少ないヒントの中で自分が誰であるのかを必死で探し当てようとしますが、夢から覚めた現実の世界で結局自分は誰でもなかった、というラストまでの謎が明かされていく過程を描ければと思います。
文字数:246