梗 概
ヴェラ・イコン
◆
聖戦という名の大規模テロからついに、宗教戦争が勃発する。
各々が信じる神を掲げ、異なる宗教の人民が争うようになり、数年後。
戦争により人口の激減した世界で、人々は自分の信じる宗教ごとに分かれてひっそりと暮らすようになっていった。
そんな中、無神論者ばかりの暮らす島国があった。
そこの住人は元々宗教に対して寛容だったのと、島国だったことから他の地域に比べて破壊されたものも少なく、比較的平和だった。
◆
それ故に、思考する余力があった。
そうして、一人の男が考え始める。
人間は何故信仰を捨てなかったのか。
信仰は何故、あり続けるのか。
気になった男は、旅を始める。
旅の中で男は、多くの人に出会いながら、
・神話に似たエピソードが多いこと
・教祖にまつわるエピソードが似ていること
・神の定義が同じ宗教がいくつかあること
など、様々な共通点に気づいていく。
「何故、争うほど相容れない存在でありながら、こんなにも似ているのだろう」
しかし調査の旅は思うようにいかなかった。
戦争により重要な宗教施設は破壊されており、重要な資料も全て灰燼に帰してしまったためだ。
その上、真実を知るために人の寿命は短すぎる。
◆
男は道半ばで限界を感じ、真実の追及を旅の途中で出会った者らに託すことにした。
失意の元故郷へ帰った男を、同胞たちはあたたかく迎えてくれる。
旅をしていた数十年の間に、故郷である島国では科学技術が発展していた。
他国では、宗教的しがらみが邪魔をする中、無神論者ばかりの暮らすこの島では、なんの葛藤もなく技術を発展させることが出来たのである。
そうして開発されたものの中には、人体を低温状態に保ち老化を防ぐ装置もあった。
実用化されておらず、安全かどうかも分からないというその装置に男は惹かれ、自分が実験体になることを請け負う。
こうして、男はコールドスリープに入る。
目覚めた時、自分の追及していた問いに答えを与えてもらえることを祈って。
◆
数十年後、彼はようやくコールドスリープから目覚める。
しかし目覚めた時地球は氷河期に入っており、人類は見当たらなかった。
同胞は残っておらず、研究結果も失われていた。失意の元、彼は装置に入って再び眠る。
そしてさらに何百年もの年月が経った後。
目覚めると、自分の知る人類と少し外観が違うもの、限りなく人類に近いものが活動を初めていた。
◆
男は、やがて彼らに接触する。
初めは奇妙なことばかりを言う男は気味悪がられていたが、豊富な知識量と、今の彼らが知らない技術を継承したことにより、神として崇められていくようになる。
神ではないと否定すると、今度は救世主だの預言者だのと言われるようになる。
そうしているうちに、時の権力者に目をつけられ、人民を惑わしたとして処刑されることとなってしまう。
刑場である丘へ連行されている間、彼は思う。
人は、崇めるものが必要だった。
だからどれだけ時が経っても、どれだけ場所が隔てていても、神は必ず生まれたのだろうか。
――それとも、自分と同じように長い年月を経て目覚めた人間がかつての世界にもいたのだろうか。
磔刑に処せられながらも、彼は問い続ける。
宗教とはなにか。神とはなにか。
――死んだ自分はどこへ行くのか、と。
文字数:1311
内容に関するアピール
ピラミッドは何故出来たのか。
その手の話を聞く時、「未来人かなあ、宇宙人かなあ」と私はわくわくします。
歴史上には、どうしてそれが発生したのか分からないことがゴロゴロところがっています。私の中で、宗教はその中の一つです。
人に信仰が必要なのは分かる。
でも、何故?
どうしてこうなったの?
そんなお話です。
文字数:147