歓喜なる光と声に満ちて

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梗 概

歓喜なる光と声に満ちて

 銀河通信社の報道記者アナ(28)は、銀河の人類領域の端、俗に辺境星域の惑星ロンガに、独り降り立つ(AIが操船する小型宇宙船にて)。
 大学寮で同室になって以来の恋人・ミサ(28/宇宙民俗学者の卵)が、2周期(地球歴で約3ヶ月)前に「ロンガへ調査旅行に行くね~!」と旅立ち、「ロンガに着いたよ!」とのメールを最後に、連絡を絶ったから。

 ロンガは「大地と風と共に」を是とする(かつてのネイティブ・アメリカンに近い文化)、ガンガ人の住む惑星。
 人類に酷似したガンガ人だが、額の第三の目で赤外線など人類には視認できぬ波長の光を捉えられる。
 ガンガ人の主部族と接触したアナは『天から来た人』と呼ばれ、歓待される。
 ミサは1周期前に案内役のガンガ人と共に《精霊の巣》へ調査に向かったきりとのこと。
《巣》は、かつてロンガで栄えたものの、数百万周期前に亡んだ種族の遺跡だ。峻厳な山脈の地下深くに在り、そこへ至る洞窟は天然の迷路。ガイド無しに辿り着くのは不可能。

 ガイドを志願した少年ゴル(ミサの案内役の弟)と共に、アナは《巣》へ。広大な地下洞窟は、アナの持参した照明器具でも全域を照らすことは叶わず。
 第三の目を活かしたゴルの誘導に、助けられるアナ。

 やがて二人は《巣》に到達。
 巨大な鍾乳洞と言うべき地下空間に、いま尚、表面に傷一つない超金属製の三角錐(高さ30m程)が屹立。三角錐の近くに男の遺体が無造作に転がる(気温が低く腐敗はなし)。背中には致命傷のナイフが。兄の遺体にすがり、慟哭するゴル。
 ゴルを尻目にミサの名を叫び続けるアナの声が、洞内に反響。

”あれれ~? どうしたの、アナ?” 
 突然、恋人の無邪気な声が応じ、唖然とするアナ。三角錐の表面に巨大なミサの顔が浮かぶ。

 以下、ミサが語る経緯。
1)三角錐は、生命体の精神を吸収し、エネルギーに変換する炉(精神を吸引された肉体は塵に)である。
2)ロンガの先住民は、他の惑星との戦争で得た数億もの捕虜をこの炉にくべては、莫大なエネルギーを得る一方、更なる外征を繰り返した。
3)ある時、炉が暴走! 先ロンガ人たちの大半も、炉に吸収。また地上にあった炉は、チャイナ・シンドロームの要領で、地底深くまで沈んだ。
4)生き残りのロンガ人は、炉へ至る路を埋めた後、滅亡(その後、地殻変動で炉への路が自然発生)。
5)調査に来たミサは、炉に”選ばれた”と告げられる。制止するゴルの兄を刺殺し、ミサは肉体を捨てて炉と一体化。

「あんたって娘はいつも後先考えないんだから」 嘆息するアナ。
 ゴルを手刀で昏倒させ、アナは三角錐に浮かぶミサの顔に身を寄せる。
「ま、そこが好きなんだけど。私も付き合うよ、ミサ」 

 ~ロンガの地表を大地震が見舞う!
 山脈が崩れ、地下から浮上した三角錐が歓喜に満ちた光と声を放ちつつ、宙空へと消える。
 目指す先は、一千億の人類を擁す、人類領域だ。

文字数:1194

内容に関するアピール

『辺境』というお題に接し、高校時代、正伝15冊を読破したA.バートラム・チャンドラーの『銀河辺境シリーズ』を想起したものの、内容をほぼ忘却……という書き出しでお察しでしょうが、本梗概は第8課題用に書き出したものの、「主人公が地下で三角錐に遭遇」した処で、展開に行き詰まり、未提出に終わったものをリライトしました。

「この梗概で4万字も書ける?」と問われると心許ないものの、そも4万字の作品を書いた経験が皆無なので、「挑戦あるのみ」としか。

主人公がラストにああいう決断をするからには、彼女の過去には色々あったハズ。本篇はそこら辺を深掘りする感じかなと。

《精霊の巣》は『NHKスペシャル』で見た、中国貴州省の巨大洞窟『龍の巣』のイメージですが、情景描写は苦手&下手との自覚があり、悩み所。

 ともあれ今期の学習の成果を反映させるべく、努力する所存。
 講師陣、スタッフの皆様、お世話になりました。 

 

文字数:394

課題提出者一覧