君と歩く、くり返しの行き先(第七回 くり返しの行き先 改題)

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梗 概

君と歩く、くり返しの行き先(第七回 くり返しの行き先 改題)


 深倉ユイカは、入院先で夫のヨシミツくんに看取られた直後、小田急線の車中にいると気づく。18歳で大学入学試験帰りのようだ。混乱もつかの間、前世の親友、桜樹リツコが現れ「2度目の人生にようこそ。私達はループしている」と言う。彼女は7度目だそうだ。会えた喜びでヨシミツくんと再び交際したいと話す。
「禁止されてる。貴方には2度目でも、ループは既に4718回目。記憶保持者は六千人にのぼる。ヨシミツくんとの交際経験がループに加わるトリガー。彼が死ねば時間は戻る。その時点で生きていなくても交際経験者なら記憶を保持して再開出来る」
 それはグレートリセットと呼ばれるそうだ。残念ながら本人は記憶を保持できないらしい。
「ループ世界の互助組合から始まった統合管理機構ジェネシスは、いまや世界を制御している。参加を歓迎する。なお貴方に拒否権は無いわ」
 10ループの間の職務と引き換えに様々な便宜が図られるのだそうだ。帰宅すると前世には無かった父の昇進を知らされた。交際運用特務機関エデンに配属され大学生活を始める。目的は利害関係派閥の意向を調整しながら、ループ参加者を増やすことと知る。
 桜樹リツコから指導されヨシミツくんを護衛する。思慕を押し殺し選定した女性と接触させ反応を見る。苦労の末、交際へ発展する。次の候補者を選定中に、彼がこれで幸せなのか疑問を持つ。そこに唐突なグレートリセットで世界が巻き戻る。


 4719回目のループ。報告によると暴漢に刺殺されたようだ。犯行声明が出され、リセットを1000回行えば終わると主張する過激派と分かる。ヨシミツくんと会話する。しかし二人の過去も前回のループも覚えていない。自分のヨシミツくんはすでに居ないと痛感する。
 リツコとジェネシスの上層部に報告に行き。組織の目的が全人類をループに加える事と知る。咎められず改善を指示されるが、彼らの腐敗を目にして幻滅する。
 困惑するユイカは上司にある住所を教わる。16万年生きている始祖世代、奥峰千歳に面会する。彼女は語る「袂を分かった、反ループ派の兼海栄枝は、ここを檻だと言った。でも社会なんて、元々檻みたいなもの、全人類が檻の中に入れば、そもそもが正常化する」
 その言葉を噛みくだけないまま。過激派の暗殺を阻み護衛する。新たに相手を選定し交際させ、次の候補の女性を探す。そこでまた、グレートリセットが起こる。


 4720回目。犯人はループ開始直後に整形して交際者と入れ替わった記憶保持者だった。内通者であった桜樹リツコと話す。ここは永遠に続く牢獄である。ヨシミツくんも記憶が無く自由意志が奪われている。許容できないものだと主張する。
 ユイカは、それでも毎回の人生を幸せにしてあげることは出来ると考えた。私たちには牢獄だが、記憶を保持しないヨシミツくんには、かけがえのない、一度きりの人生のくりかえしなのだ。
 4733回目。銃撃戦のあと、公園で子守をする彼を見守りながら思う。人生を何度か見届けた。職務義務期間は過ぎている。そろそろ自分が何をすべきか決断する。
「今生のヨシミツくんは幸せかな。分かったんだ。きっと実現してみせる。ループから皆が自由に出ていけるようにする」
 その後の90回を利用してタイムマシンを開発し中立移住機関エクソダスを立ち上げた。いまや望めば誰でもループの外側、ヨシミツくん死後の未来へ移住できる。ただし再び交際しないと、中へは戻れないし脱出前の記憶は持っていない。機関は軌道に乗せた。引退を決意したユイカは自分もタイムマシンでループを脱出する。未来に拠点を築いた仲間と合流する。初めてユイカのヨシミツくんの為に墓参りができそうだ。

文字数:1512

内容に関するアピール

 

第七回 で最終実作にと推していただいた「くり返しの行き先」の梗概を改稿を加えました。

 

■下記以外にもぜひ、ご指導いただけますと。
□気になっている箇所

1.第七回と比べて良くなっているか。

2.第七回から人物の名称の整理。想定される1ループ年月から、回数の調整を行っています。
1ループは大学入学試験から、ヨシミツくんが死ぬまで。50年は生きるでしょうが、
毎回暗殺が成功するとも限らないので1ループを平均40年と想定しています。
なので、タイムマシンの開発にかかる年月は、90ループx40年 3600年となります。

許容できる読者を「振るい」にかけてしまうので、実際の経過を「年表記」せず、
計算した人だけ気付ける形にしようか、
あるいは思い切って明示して麻痺してもらおうおか悩んでいます。
ちなみに4733ループは、単純計算で19万年相当になります。

 

文字数:364

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