マルチプル・コンプレックス

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梗 概

マルチプル・コンプレックス

人類が宇宙に進出した時代。人々は居住可能な惑星を見つけてはそこに植民用の宇宙船を送っている。
主人公ピーター・ワンの乗る植民船は惑星の重力圏に入る際、船のエンジンが故障し不時着する。不時着時の事故で主人公以外は全員ポッドの中で眠ったまま死亡してしまう。

目覚めた主人公はなんとか船内環境だけは修復するも、星の特殊な磁場のせいで救難信号も送れずひとり途方に暮れる。幸い食料もエネルギーもある。しかし孤独に耐えられなかった主人公は自分の体細胞からクローンを製造し、それで孤独を解消しようとする。培養に成功した12個の人工胚から記憶を引き継いだクローンを製造。初めは驚いていたクローン達だったが、あっさりと状況を受け入れ、各自ニックネームを名乗り自然に生活し始める。

しかし事件が起こる。クローンの一人(12番目)が女性版の準クローン(普通に可愛い)を作る。船内では女性版の俺を巡って争いが起こる。12は彼女を守るため知能をあえて落としたクローンで私兵団を作り、船内を占拠。主人公達も対抗してクローンを作り、そこからクローン製造のインフレが始まる。クローンが100人を越えたあたりで使者を出して会談を開くように。やがて抗争は形骸化し、『俺』達はこの先どうするかを話し合う。

本格的に惑星脱出計画を練るが問題がある。星の重力圏には特殊な磁場があるため、そのあいだは核パルスで動くエンジンを着る必要があるが、車みたいにオンオフできない。再点火するには手動で制御棒を挿入する必要あり、タイミングがズレれば致死量の放射線が出る。つまり死ぬ。

誰もやりたがらない。クローン達には帰る場所がない&クローンだとバレたら死刑となる。みんなが主人公のことを見る。主人公しかやる動機がない。

そこで一人が手を上げる。最初に生み出されたクローンであるトワイスだった。
※主人公の名前は何の因果か、ピーター・『ワン』。なのでトワイスはワンもツーを名乗れずトワイスを名乗っている。

トワイスは言う。俺たちがこうして生を与えられたのはオリジナルのピーターがいたおかげだ。だから手伝う。
リーダー的な存在でもあるトワイスの言葉に他の皆も頷き、かくしてタッグで惑星脱出作戦を決行。

しかし再点火の直前でトワイスが裏切る。トワイスは最初に生まれたクローン。しかし最初(ワン)を名乗れなかったクローン。そのためオリジナルという属性に執着しており、事故を装い主人公を始末して成り代わろうとしている。

生まれというのは実は強力な物語でそれは宿痾のようなもの。クローンである自分達がそれを超える物語を供出するには国家や宗教など、個人のナラティブより大きな物語を打ち出さなければならない。だからこの星に自分達の国を作る。そのためにはオリジナルの持つ船の最高位権限が必要。

その場の勝負は主人公が辛勝。
エンジンを再点火しに行くも、最後の最後で点火装置が壊れ、主人公は装置の下敷きに。

もう駄目かと思った主人公を救ったのはトワイスだった。
「あんたはこの船を救ったのが俺だと語り継げ」
トワイスは炉のようなエンジンに飛び降り制御棒を差し込む。あたりは白く眩しい光に包まれる。

その後クローン達は亡きトワイスの意志を継ぎ、船団国家となって旅を始める。
主人公は母星に戻り航海日誌という形で船を救ったトワイスの物語を書き始める。

文字数:1368

内容に関するアピール

直近でミッキー7を読み、あのオフビートに全滅の危機が進展していくようなノリがとても好みだった。ただ使い捨てクローンという設定があまりフィーチャーされていなかったので、その部分で差別化したり、もっと毛色の違うものを作れるかもと思い、このめちゃくちゃ自分が増えてしまうという話を考えました。

しかしオチに納得感がない気がする。

・コミュ障の自分が考える他人が全員自分だったら話しやすいだろうな、という妄想が現実になってしまう話
・ドッペルゲンガーの話
・バ美肉に転生してメイド喫茶を開いてみたいという話
・結局、遺伝子レベルで同一の存在を分かつものは何なのか。それは個人の持つ物語ナラティブなのか、みたいな話

上記のように色々やりたいことはありますが、国を作りたいライバルに対して主人公の思想信条がなさ過ぎるので、実作ではそこのオチをつけられるように書きたいと思います。

文字数:380

課題提出者一覧