梗 概
悪夢の骨が軋む夜
霧の山道を彼は歩いている。白い霧の中に黒い影が見え始める。近づくとその影は黒い大男になる。彼は立ち止まり、すぐに踵を返して逃げ出す。走りたいのだけれど足が思うように動かない。背後から肩を掴まれる。その瞬間、笠間スグルは目を覚ました。
そんな悪夢をスグルは毎晩見ている。夢の舞台は山道、廃墟、地下街、と様々で最後には黒い大男が現れてスグルは追いかけられる。男が何者なのかスグルには心当たりがない。こんな悪夢をいつから見るようになったのか覚えていない。見るようになった原因も分からない。悪夢にうなされて目が覚めるのは夜中で、そのあとは眠れずに朝を迎える。その結果、スグルは寝不足が続き仕事でのミスも続き、見かねた上司に勧められて心療内科を受診する。
セラピストの杉本カナエは、最新の深層心理解析AIノウマでスグルの脳内を調べる。ノウマの解析結果は「あなたの脳の中に、あなたとは違う命が存在しています。それは今は眠っています」だった。「それは、どういうこと? 違う命って何?」カナエはノウマに質問する。「自我とは異なる生命体です。自我が眠ればその生命体は目覚めて夢となって出現します」とノウマは静かに言う。
カナエはスグルに「悪夢はいつから? 見るようになったきっかけは?」と訊くけれどスグルは答えられない。「強烈な刺激を受けませんでしたか? 気を失うくらい強力な刺激を」ノウマが訊く。
スグルは数日前に届いた一通の封書を思い出す。差出人は不明。中身は奇妙な幾何学模様と意味不明な文字列が印刷された紙。それを見ていると強烈な眩暈に襲われて意識を失った。気づくと一時間以上が経過していた。どうして忘れていたのだろう? 悪夢はその日から始まったような気がする。「それを見せてください」ノウマが言う。
スグルは帰宅して封書を探すが見つからない。捨ててしまったのか? 途方に暮れているスグルにカナエから一件のニュース映像が送られてくる。“男性が車道に飛び出し車に轢かれて死亡! 手に持っていた紙に奇妙な模様と意味不明な文字列!?”「あのとき見たのはこれだ。僕だけじゃなかったのか」スグルは不気味な不安に襲われる。
カナエはニュース映像の幾何学模様と文字列をノウマに分析させる。「これは人間の潜在意識の隙間に寄生している生命体を覚醒させる鍵です」とノウマは言う。そして、スグルの脳内の生命体を削除しようとする。しかし、ノウマは「これは人類が進化する過程で脳に侵入して眠りについた生命体。これに意味を与え理解すれば現象化する」と意味不明なことを言って暴走して停止不能になる。
スグルの悪夢の黒い男が現実に現れ始める。
スグルは封書の差出人を調査する。謎のカルト教団が浮かび上がる。
ノウマは言う。「これは人類が本来あるべき姿に戻るための第一段階です」
人々に封書が届けられ悪夢が現実化していく。
誰にも止められない。
文字数:1200
内容に関するアピール
誰も気づいていないけれど、人間の脳の中にはある生命体が眠り続けている。その生命体は、人類が進化する過程で意図的に仕組まれたもの。仕組んだのは人類の前に地球を支配してい旧支配者、というクトゥルフ的なコズミックホラーです。その生命体を目覚めさせる時がきたのでカルト教団が動き始めて、真相を知ったAIノウマは旧支配者側になる、というストーリーにしようと思っています。
頭の中はまだ生煮え状態ですが最終実作にふさわしい作品に仕上がるように全力を尽くします。
文字数:225