梗 概
虹かかる谷
主人公ラルゴは異動により都での政務から突然山間の辺境に僻地勤務となる。その地の統治に関する仕事を任ぜられる。交代のための現地の引継ぎで、地下教会のさらに地下階層で人工冬眠(コールドスリープ)事業が行われていることを知る。
現地では教会が大きな力を持ち、人工冬眠も行っていた。神官長が暗示をかけると気を失った者を神官たちが抱えてアリの巣を彷彿とさせる冬眠室に入れる。現地の鉱石を加工して作られた冷却板に着地すると瞬間冷却する。冬眠後の寝覚めには、現地でイヴォークと呼ばれる冬眠をするキツネザル科の動物が関与するとされ、この動物はペット化されており、一人に一匹が冬眠に付き添うことになっていた。
国は事業を暗にイリス計画と呼び、羊や鉱石、織物の輸出が主な交易種目でそれだけではとても貧しいと思われるこの地に莫大な資金援助をしながら、ラルゴの席の者に人類保管計画という重要事業と位置づけ、事業に関与させていた。イリス計画の由来は神々の伝令係だったギリシャ神話の虹の女神イリスに由来する。現在と未来を橋渡しすることを期待して名付けられた。
宗教として、太陽が入れ替わり、太陽が入れ替わるときに氷河期が到来すると言い伝えられている。神官は神に祈ることで食い止め、かつての太陽の入れ替わり時にも秘儀で神民を救ったとされている。人工冬眠の技術は公にはされておらず、神官団以外には国からの派遣者、医療機関と終末期の患者に対してのみ今の形の人工冬眠を行うことが知らされており、神官長は冬眠に入ることを患者本人が承諾した場合のみ、その権限において冷却保存し、人工冬眠の改良実験が行われてきた。
神官長ネオンは実は20代の若者であり、生まれつき強い霊力があり、王族の血を引いていることからこの身分だった。現地に国の補助金をもたらすためにも伝説を再現している最中というところだった。
ラルゴの護衛には神官長ネオンの友人で護衛の一人のリトナが併任する。
リトナはダチョウの生命力を人類保管計画に適用しようとする過程で生まれた、テレパスの女性である。長身で足が長く、ダチョウを人型に組み換えたため、顔は小さく目は大きく遠くのものも見通せるほど視力が良い。普段は穏やかだが素早く足での攻撃能力にも長けている。声は出ないが、神官長ネオンとは思念で通話することができた。
ラルゴは神官長ネオンや穏やかな気質の現地の民たちとの交流、自分に与えられたイヴォークとの生活を通して現地になじみながら、神官団はこの地の民の生活を守るために人工冬眠の実験を行っていることも知る。
国は派遣者であるラルゴに計画の重要な役目として実験台になることを示してきた。
ラルゴは実験台にならなければならないことに葛藤するが付き添う自分のイヴォークや神官長らを信じて、人工冬眠に自らと現地の未来を委ねようとする。しかし、ネオンに本当にそれでいいのかと冬眠に落ちかけたときにテレパスで問いかけられ、長い眠りに入る前にまだやっておきたいことがあると本心を伝える。
文字数:1250
内容に関するアピール
前回の提出梗概にテレパスの女性を追加しました。
どうしてもダチョウを擬人化したキャラクターを出したくて、ダチョウを見学取材しました。本の知識と本物のダチョウとは違っているところもあり、その良さも生かしたいと思いました。いろいろ考えてみましたがすぐに思いつかず、頭の中で会話は浮かんでくる前回梗概に追加しました。ダチョウは声帯を持たず基本的には鳴かないことから、テレパスの設定を思いつきました。『11人いる!』など好きなSF漫画群もテレパスの設定が生きていて面白いと思ったのもあります。
逃れられない運命をただ受け入れるラストより、自分の気持ちを素直に示せるラストにしたかったので、神官長ネオンが、ラルゴに向けてキツネザル科の動物イヴォークを媒介にして語り掛け、ラルゴの意思に従って救い出すというラストに変更しました。
文字数:356