摘み木の部屋

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梗 概

摘み木の部屋

街から少し離れた丘の上に、大きな寄宿学校がある。
赤い屋根の可愛らしい館の中では、13歳~16歳までの子供達が寝食を共にしながら、”神様”になるために日々の英才教育を受けている。彼らは机を並べながら『誰かの役に立つ大人になる』ために日々勉学をこなしている。
また、カリキュラムの中で、15時以降は”遊戯”という枠の時間が設けられている。
1人1部屋を与えられ、その中で自分なりの”街”を積み木で製作し、卒業までに発展/運営をしていかなければならない。

1年生秋にして、すでに”街”を作り上げたミサキにとってのそれは「退屈しのぎ」に過ぎない。彼は裕福な家に生まれ、何不自由なく育ってきた。学力も芸術的素養も持ち合わせ、何もかもが揃っている。が、何事にも夢中になれず、どこか虚しい。
彼の街は高い時計台を街中心に置き、アーチ状の建物と曲線美による組み合わせは教員にも高い評価を得ていた。自分でも気に入っている。しかし彼はつくることは得意でも、維持することに関心が湧かないのだ。

ある時、ミサキは自分の作った積み木の街から声や騒音が発生しているのに気づく。よく見ると小さな”人間”たちがその街に移住し始めていた。”人間”はミサキの作った空間で思い思いに生活を始め、自分たちの歴史を作ろうとする。
ミサキはその中で、行商人見習いのモースという同い年くらいの少年を見つけ、興味を持った。彼は両親がいない中で大変貧しいが、持ち前の明るさで目の前の困難を打破していく様は痛快で、自分にはない魅力をモースに感じたのだ。ミサキは次第に街づくりへのやる気を取り戻していく。インフラ整備や街の開墾、またある時は友人と話をつけて、他部屋の街との商売ルートの確保などの手助けを進めた。その努力もあって、だんだんと街は発展し、人口は増えていく。

モースが大人になり、結婚して子供が生まれた頃、ミサキの街である動きがあった。それは、人口増加と土地不足によって、このままでは街が飢餓になってしまうということ。街の長は、近隣の街に戦争を仕掛け、領土の拡張を目指すことに決めた。
慌てたミサキは隣町への橋を下ろしたり、議会の場所を移動させたり、雨を降らしたり様々な手を尽くしたが、彼らの意志は固く、ミサキ自身も土地不足という問題に抜本的な対策を打てない。
そしてついに、隣町との戦争が始まった。矢や投石が飛び交い、苦労して作り上げた街は、あっという間に壊れていく。
呆然とするミサキの横を、小さなモースは兵士として隣部屋に進軍していく。ミサキはモースだけでも止めようと、彼をすくい上げ、そして妻と子供も探し出して回収し、部屋から逃げ出した。

ミサキは戦う人々を止めることができず、担任の教諭に助けを求める。しかし教員はミサキの部屋に行くことはなく、彼を学校の立ち入り禁止の扉へ案内した。その扉をくぐり、地下に降りていく。たどり着くと、ミサキたちの部屋と同じ構造の部屋が並び、その部屋には燃え尽きた積み木の街が広がっている。学校の地下にはこうした、今までの生徒が作っては失敗したコミュニティが無数に広がっているという。”神様”になるための、重要な統治シミュレーション、つまり教育だ。
「まああれだ、皆失敗してるんだからさ、ミサキ、そんなナイーブになんな。お前はまだ優秀な方だよ。Aやるから。で、新しいの、また作れよ」
「…そういう問題じゃないんですよ」

次の春が来て、ミサキは一つ学年が上がった。失敗した生徒には、再び新しい部屋に分け与えられた。まだ何もない白い空間。ミサキは積み木で小さな家を作り、そこをモース家にプレゼントした。

学校は地下に伸び続ける。そこには忘れ去られた、大量の”街”が眠っている。

文字数:1518

内容に関するアピール

積み木やレゴで家や街を作って、その中で生きている人々を想像する、という遊びを結構な年までやっていました。なんなら今も時々やってます。
神様気分でのごっこ遊びではないですが、物体としてその舞台を設計して、”なんとなく”登場人物を思い描いたりする遊びは、一度くらいは皆さんしたことありませんか?
自分はやっていませんが、シムシティやマインクラフトが人気なのは、そういう遊び方をしている人も一定数いるのではないかなーと想像しています。

今回はその視点を参考に、過去に無数に作られ、そして壊された街や家、人を頭において書きました。全部に愛着持つなんて不可能だし、第一飽きますし、でもあの時、あんなこと、あったよなーぐらいに思い出したら、まだその街はあるのかもしれないですね。忘れられたら全部消えますからね。まあ、こうやって身勝手な見方されて、摘み取られる方はたまったもんじゃないですね。色んなことに言えますね。

実作ではシミュレーションゲーム的に勝手に意外な方に肥大化していく街の人々の様子とかも、詳しく描きたいです。モースの恋愛模様を13歳のミサキがドキドキしながら見てるとことか。

 

 

文字数:482

課題提出者一覧