梗 概
クールー病は発症するのか?
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とある未来のこと。
地球は酷く汚染され、地球に住めなくなった人類はひとまず火星に移り住むこととなった。
火星に移住し、文明を発達させ、人類が住めるよう火星を改造してから数百年。
あくまで地球人としてのアイデンティティを保ったまま火星で子孫を増やし続けた人類は、生活に余裕が出てくるにつれ、地球への羨望を強くしていった。
かつて人類が栄えていたという、『青い星』。そこは、どんな場所なのだろう。
そのうち、地球の汚染はずいぶん減り、人類が移り住めるほど浄化されたことが分かる。
しかし憧れの対象である『青い星』をまた、自分らが汚してはならない。
そのため火星育ちの人類は、地球に降りる際の条例を作った。
① 一度に大勢の人間が地球に降りてはならない。
② 滞在時間は1時間までとする。
③ 地球の植物・動物を破壊してはならない。
④ 立ち入り禁止区域には入ってはならない。
この条例に従いながら、地球観光をするようになる人類。
こうして『地球日帰りツアー』は、メジャーな娯楽となっていった。
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そんな中、地球に憧れを抱いている十四歳の少女リコは両親に頼み込み、『地球日帰りツアー』に参加する。
せっかくなので、地球人が昔に着ていたと言われているセーラー服を着てツアーに参加するリコ。周囲の参加者にコスプレだと笑われたりしながら、憧れの地球へやってくる。
地球は緑が覆い茂り、美しい場所となっていた。
◆
しかし、途中でツアー参加者らとはぐれ、更にうっかり足を踏み外して崖から落ちてしまう。崖の先は、立ち入り禁止区域だった。
崖は高く、戻ろうにも戻れない。悩んだ末に、別方面へ歩き戻る道を探し始めるリコ。
そうして歩いているうちに、不思議な生き物に出会う。その生き物は自分の二倍も身長があり、頭部に毛が生えている二足歩行の生物だった。
不気味な姿に、慌てて逃げようとするリコ。しかし、それよりも先にその生き物に襲われ、リコは命を落とす。
(歴史で習った原人みたい。北京原人とかクロマニョン人とか、そういう名前の――)
最期にリコの頭に浮かんだのは、それだけだった。
◆
「おおい、どうしたんだ!」
そこに、数人の人間たちが慌てて走ってくる。
――彼らこそ、本当の地球人。火星に移り住むことを拒絶し、汚染された地球で科学力に頼って暮らし続けていた人類の末裔だった。
彼らは、地面に倒れているものの姿を見て、なにが起きたのかを把握した。
頭部は大きく灰色の肌。そして、大きな黒い目に、鼻の穴と小さな口。そこに倒れている生き物の姿は、最近よく見かけるものだったからだ。
「またエイリアンか」
納得しつつも、人間たちは地面に倒れ伏しているエイリアンを見て首を傾げた。
「なんでこいつ、セーラー服なんか着てるんだろう」
「きっと、俺ら人間に憧れて真似でもしたんだろう」
エイリアンが火星の気候に併せて進化した人類だと思ってもいない人間たちは、念のためともう一発エイリアンに向けて発砲する。
そして、確実に死んだことを確認すると、そのエイリアンを連れて帰った。
汚染が消えたとはいえこの地球で、タンパク質はまだまだ貴重なものなのだ。
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内容に関するアピール
現在自分らが暮らしている地球に来ることが娯楽=遊びになった時代の話です。
あと、グレイがセーラー服着たら可愛いだろうな、と思いこうなりました。
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