最高の夏がやってくる。

これは社会人としての初めての仕事に戸惑いながらも頑張るマシューの恋と青春の物語！

あらすじ

　マシュー・ドーキンスは高校を出たばかりのティーン・エイジャー。卒業と同時にカリフォルニア市役所に就職した彼は、「アドレス不在メール返信課」に配属される。そこは存在しないアドレスに送信されたメールに対して、「このアドレスは存在しません」と返信をする部署だった。

　出勤初日、マシューは驚く。あだち充先生が隣の席で漫画を描いていたからだ。あだち先生はアメリカ進出を見据えてカリフォルニアを訪れ、アート支援政策を利用して市役所の一角を借りて漫画を描いていた。マシューも『タッチ』はアニメで見たことがあり、「職場ってすごいな。高校とはぜんぜん違うな」と実感するのだった。

　同僚のエリ・レマ・サバクタニはカリフォルニア大学バークレー校を卒業して市役所に就職した先輩職員。その知性をたずさえた美貌にマシューはメロメロになってしまう。勇気を出してデートを申し込むと、なんとOK。

　そこで彼は「何も聞かずに手ぶらで来て」と言って、グランドキャニオンに水1リットルのみを持った、1週間のサバイバルキャンプに彼女を連れて行く。学生時代に友人たちとした最高の体験（極限状態からの生還）を、彼女と追体験したかったからだ。

　だが、彼女は機嫌を悪くして途中で帰ってしまう。マシューが緊張のあまりお母さんを連れてきてしまったからだ。目の前でマシューが母親にサバイバル生活におけるアドバイスを言われているのもよくなかった。頼りなく見えてしまったのだ。マシューの母はヒッピー世代で、キャンピングカー1つでアメリカを回った経験がある。

　エリに振られて気落ちしていると、マシューは仕事面でも苦境に立たされる。同僚に濡れ衣を着させられたのだ。業務上横領罪に問われ、懲戒免職に。在宅起訴の身となる。

　メンタル面をやられたマシューは部屋に一口だけ齧ったリンゴをたくさん飾る。机の上にリンゴを置き、「ほら、これもアップル製品になったよ」と言い、その姿に母親は困惑した。

　幽閉されたような生活に転機が訪れる。朝の情報番組での今日の運勢が「立ち上がってもう一度頑張ればいいことあるかもね☆」とあったのだ。それを見たマシューは立ち上がることを決意する。

　裁判で毅然と戦い、無罪を勝ち取ったマシュー。その姿にエリは彼を見直し、再び付き合い始める。冤罪事件をきっかけにメディアに露出したことで、マシューにはタレントのような仕事も来始めた。次第にその仕事が忙しくなり、会えない時間が増えていってしまう。エリはそのことを不満に感じた。

　ついにマシューにドラマ主演の依頼が舞い込んできた。その内容はタイムスリップしたマシューが医者になったり料理人になったりするというもの。長期の海外ロケが行われるため、エリとはしばらく会えなくなる。

　しかし、ドラマに出るなんてまたとない機会である。マシューは俳優業とエリのどっちを取るかで深く悩む。考えをリフレッシュさせるためにやってきた海で、マシューは見知った顔を見かける。あだち充だ。あだち先生がサーフィンにやってきていた。

　今の悩みをあだち先生にするマシュー。すると、あだち先生は「僕は漫画家だ。そういうことの答えは、すべて漫画に描いているつもりだ」とだけ言う。

　はたしてマシューはドラマの撮影をするために、日本へと飛び立った。出演することを選んだのだ。

　エリは1人部屋で泣いていた。彼女は写真立てに入ったマシューとのツーショットを片付けようとする。すると、電話が鳴る。出てみると、相手はマシューだった。

「マシュー・ドーキンスはエリ・レマ・サバクタニを愛しています。世界中の誰よりも」

　その言葉を聞いて、彼女は涙をぬぐう。そして、彼の帰りを待つことを決意するのだった。

（おわり）