梗 概
罰当たり
犯罪一家である叔父夫婦に引き取られた俺は、立派な反社会分子に育った。
22歳、冬。叔父の身代わりとして自首をすることになった俺は、長期と予想される懲役を前に、「マインドフルネス」のヤミ講習を受ける。
【舞台】
2030年、青森港湾。
団地の一室。冬の夜。
【2つの時代背景】
・瞑想が世界的ブームだ。マリファナなどのドラッグ・カルチャーは、一部合法化という流れもつかの間、衰退している。理由は「不健康だから」。
・刑務所は完全民営化。高度にして無機質な監視システム。他の服役囚とは没交渉の、全室独居房が主流。孤独。
【オープニング】
敵対する組織の幹部を拉致した叔父と俺は、拷問の末、そいつを殺してしまう。
夜が明けたら一人で自首するように、俺は叔父から言われた。
従兄弟が、とある団地の一室に連れて行ってくれる。若い女が瞑想を指導してくれる。
呼吸法。ただそれだけ。
仮に20年の懲役であっても、時間を忘れてしまうほどにその「遊戯性」に没頭してしまうという。
疑心暗鬼の俺だが、あっという間に没入してしまう。
翌朝。
一人、明け方の港湾を歩いていると、路上に血まみれで倒れている叔父を見つける。襲撃されたようだ。俺は鉄パイプでとどめをさす。
そのまま病院に行き、数年前から植物人間となっている叔母を見舞う。
意識があるのかは分からないが、その耳元で先ほどの呼吸法を、ゆっくりと唱え続ける。
その後、警察へ自首しに行く。
文字数:591
内容に関するアピール
自分の身体という最も身近なところに強烈な「遊戯性」を見いだし、時間を忘れるほどに熱中することができれば、懲役などの「罰」については大きなパラダイムシフトが起こるのではないかと考えました。
昨今注目されつつある「マインドフルネス」をからめつつ、マフィア映画「アニマル・キングダム」「ゴモラ」のようにバサバサに乾いた不穏な空気とかすかなユーモアが混じる作品として描きます。
文字数:183