蜘蛛女

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完成稿

蜘蛛女

完成稿に関するアピール

いろいろとあり、しんどい中での作画になりました。
しかし、何らかの完成品を期限前に提出できたことに、自分だけは自分に賛辞を送ってあげようと思います。

幸いにも、この作品はネームに直接講評をいろいろといただけました。
自分が持てる作業時間・エネルギーと常に相談しながらの工夫になり、またいろいろな改善案を考えましたが、結局、当初のネームに少し修正を加えたものを、完成稿としました。

いただいた各講評(おおまかな)についての対応は以下のとおりです。

 

・ナイフで負けるオチが予想できる。
→修正工数の関係(ストーリー全体をこの期間で再構成してやり直すのは実質もう1作品描くのと同じと考えた)と、そもそも主人公がバッドエンドへのフラグを立てていることにハラハラさせたかったという意思があり、オチが予想できないことがこの方向性に逆行するので対応しない。

・モノローグで心情を逐一語ってしまっていることが、読者の没入性を阻害している。
→モノローグに頼らざるを得なくなった原因を考察する時間を設けたところ、「そもそも16ページにおさめる物語として、入れようとするストーリーが長すぎた」という結論に至った。これについては次回の反省とし、現状で少しでもベターな選択ということで、以下の条件に該当するモノローグを削除した。

  1. 小夜の心情を小夜自身が直接説明しているところ
  2. 削除することがストーリーの進行を阻害しないこと

具体的には、2ページ上段と、10ページのモノローグを全カットした。
特に2ページ上段のモノローグを削除したことは、小夜のくり子に対する感情を、彼女自身から告白のある5ページまで曖昧なまま保留し、実際に明かされるまでの緊張感が生まれたように思ったので、妙案だったように感じる。

・すべてが主人公(小夜)のある意味思い通りに展開しており、ストーリーに意外性がない。例えばナイフを偶然手に入れるなどし、そのときに初めて殺意を自覚するなど、主人公すら予想できない展開を生み出したほうが面白い。
→これについては、「確かにそうだ」と賛同する自分と、違和感を感じている自分が半々で同居しているような、不思議な印象を受けた。前者については明らかに面白さを増すアドバイスなので割愛するとして、後者の、なぜ違和感を感じたかということに対して考察したところ、「これは行き過ぎた理性が暴走した物語だから」という結論に落ち着いた。
小夜はそもそもくり子に好意を抱いており、しかし様々な外的要因が、小夜にその好意を素直に解釈することを阻害していたため不幸だった、ということが、物語開始時点で小夜に与えられていた課題であった。と考えると、むしろ小夜が「偶然知覚する」感情は殺意ではなく好意であり、よって、「ナイフを偶然に手に入れて自身の殺意に気づき凶行に及ぶ」ことは、小夜の行動パターンとして生じ得ない。
また、そもそも16ページの中で、現在の構成の中に殺意の知覚までの要素を入れ込むやり方を思いつくことができなかった。本来ならばこの殺意の知覚は十分物語のひとつの山になり得るエピソードであり、よってもっと多くのページ数を割かなければならない。しかしあくまで今回の作品は小夜の発狂が山場であり、そのためにはこの部分については(現時点の自分のネーム力では)説明として流さざるを得ないという結論に達した。よって対応しない。

・ラストが弱い。読者にどのように感じてもらいたいかを想定していない自慰行為に等しい作品である。
→感受性の違いとしか言えない。何度か、ラストをもっと明瞭なものに整理し直したが、そのたびに、初期案がよいラストであることを自覚するばかりであった。
5ページで、小夜はくり子に自分の好意がくり子に向いていることを読者に向かって告白しているが、そのことについて彼女の理性は好意的ではない。好意的ではないから6ページ以降の行動が生まれたわけであって、しかし計画が失敗し、そのあたりの屈折した感情が蜘蛛女に「喰われた」ことで、彼女は自身が元々持つ、くり子への好意を受け入れることになる。このことによって小夜が幸せになったか不幸になったかは一概には言えない。しかし、くり子は従前よりずっと小夜のためを想って行動しており、そのような人間に対しての好意を許せたことは、様々な外的環境によって狂わされてしまった彼女の今後の人生が、良い方向に向かいはじめていると言っても過言ではないかもしれない。
そのあたりの考察性・読者としての拡張性を、この作品の「おくりもの」と定義しようと思う。よって対応はなし。

 

以上です。
よろしくお願いいたします。

文字数:1884

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ネーム

蜘蛛女

ネームに関するアピール

悪事を企んだ人間が、追い詰められて発狂する演出が大好きです。
逆転裁判、ライアーゲーム、ダンガンロンパなど、冷静そうに振る舞っていた人間が急に大きく表情を崩すさまには、不思議なカタルシスを感じます。

今回は、テーマである「心の爆発」としてそれを演出できるよう、外堀から少しずつ段階を踏んで、主人公の逃げ道をなくしていくようにロジックを組んでいきました。まるで詰将棋を考える時のような感覚で、とても楽しく進められ、充実した1ヶ月間となりました。

 

以前の数回の講義において、自分のマンガの読書量が不足していることに気づきました。
(私は、第1回の講義で紹介された漫画のほとんどを知りませんでした)
そこで現在は、思い切ってKindle端末を購入し、必ず毎日マンガを読むように習慣づけています。

その中で、「漫画は直接的に物事を丁寧に説明する必要はなく、8割程度匂わせられれば大体伝わる」ということを学びました。そのことにより、前回課題で指摘された「文字数が多い」ことを解消しつつ、多くの説明を少ない文字の中に込めることができるようになりました。
特に3ページ目の、「あんたのお父さんはね/受験で負け、社会でも負けたから、私や幼いあんたを殴って勝つしかなかった」は、

・父親が低学歴
・父親が仕事で何らかの失敗をした、または無能だった
・父親は家庭内暴力を働いていた
・現在は離婚している

という4つの設定を、限りなく少ない文字数で同時に説明できたという意味で、特に成長できた部分だと思っています。

 

どうぞ、よろしくお願いいたします。

文字数:651

課題提出者一覧