作品プラン
《人間らしい》
「もう少し、人間らしくして」
私はある時妹に言った。
私は妹と2人で暮らしている。
妹はズボラだ。
私も人のこといえるほどきちんとしているわけではないが ここ数年気になり すべての乱れの根源のように見えてしまう。
妹はただケラケラと笑い寝転がる。
ある時こちらには見向きもせずにくつろいでいるそのシルエットが涅槃仏にそっくりだと気づいた瞬間があった。
そうすると、妹は輝きだした。
本当は、誰しも本来の姿はこっちであるはず 。
人間らしいのは、どっちだ?
私の日常は一般的に言えば「ダメな部分」の集積で、その隙間にある僅かな社会性みたいなもので仕事をしたり、人と関わっている。
私たちの行動や思考は 形のない、根拠のない常識の集積によってコントロールされている。
日常の自己は、もう死んでしまっているのかもしれない。
今回 妹を 人間の堕落した「死」の姿として描くと同時に、誰もが持つ人間らしい部分である本来の日常への悟りの境地の表れとして、入滅へと向かう釈迦の姿を重ねて描いた。
自己の日常の死を考え、見つめることで今を生きることを見つめ直すための試みである。
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