作品プラン
H.A.G.E. CATALOG
ルノワールが女性の裸体を、バルテュスが幼い少女ばかりを描くことで、それらの対象の先にある美を見出して、それを追い求めていたとするならば、男性に特徴的な「ハゲ」の先にも同様の美を見出すことができるかもしれない−−−。
そこで私は、古今東西・現実非現実・真偽問わず、世界中のハゲを100人ほど描いてカタログ化した。実現したかったことは、「ハゲの先に見出せるかもしれない美の本質を描き出すこと」だった。また、カタログとして100体のハゲをサンプリングして、それらを類型化することで、帰納的かつ演繹的に「ハゲとはなにか?」に迫ることができるのではないかという意図もあってのことだった。
描く中で、2回涙する瞬間があったが、それは「山下達朗」の細い髪を描いていた時と、「ガンジー」の表情をなぞっていた時だった。いずれも、身体的な負荷はそれなりにあるが精神的な負荷はあまりなく、かつ、硬い鉛筆で慎重に撫でるようにして描いていた時のことだった。
描いた後で、もう一度ドローイングを見直して、”自分が結局は何を実現したのか、あるいは実現しようとしたのか”について言えることは、上に書いたことがまず”実現しようとしたこと”として言える。そして、”何を実現したのか”については、課題として”<作品>の手前にある発想の起源のようなものを描き”つつも、入れ子のように、自分の作品それ自体を成立させようとしていたのだろうということは言える。
それはこの場が<作品>と<作品ステートメント>を書くところであるという明確な事実と、なおかつ、自分の<実存>が作品を作ることを欲しているからだと思えるからです。
―
Title: H.A.G.E. CATALOG
Statement: I made sketches of 100 instances of worldwide baldness and cataloged them. My intention was to draw the essence of beauty behind baldness. By sampling 100 bodies of baldness and categorizing them, I aimed at approaching the question “What does baldness mean ?” logically.
文字数:944