作品プラン
私の土台
かつて父親の仕事の関係で両親はイギリスに渡り、暮らしていた。私もイギリスで生まれ育った。
御多分に漏れず、イギリスについての番組を見ると懐かしさにかられる部分はある。
それは母も同じらしく、毎週日曜18時となったら必ず見るイギリスについての番組があるのを見逃さなかった。
でも肝心の私は母のその行動に苦しんできた。いつも番組が始まるころには帰らず、一人で後からご飯を食べる。
もしくはさっさと食べて部屋にこもって番組とそれを見て懐かしむ母を見ないようにした。
イギリス生まれの私なのに、そのイギリスの良さを押し出す番組が苦手。
圧迫感とややこしさを抱えたまま、日曜になり、母がテレビを見ていると必ず体調を崩す。これが1年以上続いた。
もうこれ以上日曜を苦しみの日としたくなかったので成果展製作期間の2か月、私は私について考えた。
そうして出あった結論はイスラム文化の存在だった。
私が住んでいた地区は多文化が共生していた。友人はイスラム教だったし、モスクも見たことがあった。
イスラム文化に埋もれればいいというわけではなく、イギリス、日本、イスラム、そのほかの文化が入り混じる「イギリス」が私の精神の土台にあり、
純粋培養されたイギリスのクラシカルな建物や文化は私の故郷ではないのだ。
浅く広く、しかしどっしりと私の中に横たわる、「イギリス」。
文化なんて本当はいろんな文化の混ざり合いの結晶だ。
純粋なイギリスではなく混沌とした文化の潮流であるイギリスを私は愛す。
そして私は今度の日曜から、胃の中でイスラム文化もイギリス文化も日本のだって消化してみせる。
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