《petit》

作品プラン

《petit》

飛騨にさるぼぼという人形がある。真っ赤な顔面に藍のほっかむりをした、厄を除ける縁起物とされるものだ。

「さるぼぼ」とは、猿坊、つまり猿の赤ん坊を意味する。目鼻を想起させる装飾はなく、それは空白の顔面に他人の面影を写すためであるという話を聞く。例えば桃の頬をした赤ん坊、汗をかいて自転車を漕ぐ母、野菜を田畑から持ってくる祖父といったようにだ。

陳腐な話であるが、そのへんの風俗へ来て、乳首を舐めながら「こんな仕事してちゃだめだよ」と説教したがる客というのはわりかしいる。けっこういる。同じ舌で円盤は5だったらいい?と聞いてくるのである。

風俗仕事が好きなのは、ここまで直接的に誰かを救えてしまったかのような錯覚を覚えることが、それまで他になかったからだ。それは人生を豊かにする何某を付加するものではないけれども、人によっては圧倒的に不足しているかもしれない箇所を穴埋めするものである。性的欲求を満たすのを他人に手伝わせることによって、あるいは肌に触れて膝枕されることによって、またはロールプレイングによって。

p.s.その名前の由来が「風」から来ているというだけでアネモネを描いてしまったのは安直だったかもしれない。

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文字数:503

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