マリ

印刷

梗 概

マリ

目を覚ました主人公Aは、そこが船の中であることに気づく。自分がどうしてそこに居るのか、全く分からないでいるAは恐怖感も覚えるが、他の乗客たちも自分と同状態であることを悟り、恐怖が少し和らいでいく。しかし、乗客や船のスタッフとの会話などから、自分が既に「現世」では死んだ存在であり、「あの世」へ向かう途中であることを気づかされ、再び恐怖感に苛まれる。船は今、三途の河を渡っている途上だったのだ。

船が向こう岸に到着し、Aも他の乗客も降ろされ、後日それぞれ裁判が行われると聞かされた。死後7日目、彼岸初等裁判所で裁判を受けるA。そこでAは、現世において『安楽死』で自ら命を絶ってきたことを知らされる。検察側はAの自死を糾弾し即刻地獄行きを求刑、弁護側は自死を選択するしかなかったAを擁護し無罪を主張した。判決は地獄行き。ただしAの自死理由が完全に明瞭とは得心できないため、23日間の執行猶予が与えられ、弁護側は控訴のチャンスを得た。

死後30日目、彼岸中等裁判所で第2審が行われた。検察側の証人としてAの夫が出廷。夫はAの死後20日目に衰弱死したという。夫をショック死させた安楽死の大罪を検察側は猛糾弾、弁護側は圧されながらも更なる状況見極めを唱え執行猶予を求めた。判決は地獄行き、執行猶予19日とされた。安楽死の不可解さに理解を示し残した判決であった。

死後49日目、終審である第3審が彼岸最高裁判所で行われた。現世に残されたAの遺族などのその後の状況が示される。遺産を取得し金遣いの荒くなるAの息子、ショックで精神を患うAの娘。Aの安楽死の様子をTV番組で視聴し、毎夜眠れぬ日々を過ごす見ず知らずの老人等々。

終審の判決は、地獄行き。ただし行先は「あの世」の地獄ではなく「現世」の地獄。Aは「現世」に輪廻転生され、全く新しい未知の命を生きながら更なる苦しみを受け続けることとなった。

 

文字数:787

内容に関するアピール

個人的に「怖いもの」を決出することができず、世間一般的に「怖いもの」であろう「死」または「死後」を選択しました。死の中でも「安楽死」に焦点を置き、それを見つめたいと考えています。安楽死は日本では法的には認められていないでしょうから、主人公Aは無国籍の扱いです。梗概には、Aや弁護側の主張をもっと具体的に示すべきでしょうが、無念ながらそれには至れませんでした。

 

文字数:179

課題提出者一覧