パンダの竹かご

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梗 概

パンダの竹かご

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国家:パンダラは、竹林に覆われた小さな島国で、「パンダ経済(PE)」を国是とする。グローバル経済の常識が一切通用しないこの国では、輸出は最高品質の「昼寝用竹製ハンモック」のみ。国民は常に穏やかで、一日の大半を休息と「非生産的な趣味」に費やす。主要資源は、遺伝子改良された竹(NCL)である。

登場人物

アキオ(35歳): 主人公。経済学者の辣腕ジャーナリスト。一代で特異な宗教国家パンダラを立ち上げたテツ子の秘密を暴こうとする。この国には必ず何か裏があるはずだと信じ、テツ子の秘密を探る。

テツ子(70代): パンダラ精神の指導者。「パンダ主義(Panda-ism)」の創始者であり、国の実質的な支配者。その教えはすべて、「効率の追求は、最も非効率的な生き方である」という逆説に基づいている。

ジロウ(20代): アキオの案内役。テツ子の教えを忠実に守り、週3時間の「最低限の奉仕」以外は「完璧な無」を目指す。アキオのせっかちな質問に、常に「深呼吸をしてください」と返す。

導入:バカげた名前の国へ

アキオは、経済学の常識ではとっくに破綻しているはずの「パンダラ」に到着する。彼は空港(竹で編まれた小屋)で待たされ、案内役のジロウは、「太陽の角度が昼寝に最適になる時間」に合わせて徒歩で迎えに来る。アキオは最初から時計が狂い始め、パンダラの秘密を探るため焦るが、ジロウは「師は今、究極の休息の境地にいらっしゃいます」と常に引き延ばす。

転:グル・テツ子の教えと無駄の排除

アキオはテツ子に面会し、国の財政やインフラ維持の秘密を問いただす。テツ子は、ハンモックから降りず、竹筒茶をすすりながら、教えを説く。

テツ子: 「私たちは新しいものを作るという罪を犯しません。壊れない資材だけを使うことで、労働力と情熱を消耗から救っています。」

テツ子は、資金源についても「使わなければ、減りません」と答え、パンダラの安定は、「無駄な支出をゼロにした結果、収入もゼロで成立する構造」にあると語る。また、住民の労働は「消耗しないための瞑想」であり、競争社会の「早くゴールにたどり着こうとして途中で倒れる愚かさ」こそが最大の非効率だと説く。

アキオは、住民たちが「最高の昼寝スポット」を探したり、「誰に見せるわけでもない完璧な竹細工」を作ったりと、一見無駄な活動に没頭していることを知る。これは全て、「消耗しないための最適化」というテツ子の哲学に根ざした儀式だった。

承:竹の地下茎と、静かな警告

アキオは、国境が簡素な竹垣でしかないことを見て、テツ子に侵略の危険性を問う。テツ子は「侵略? そんな面倒なことをするエネルギー、他国にありませんよ」と静かに答える。しかし、その時、島全体が突如として激しく揺れ始める。

外部からの通信で、大規模な地震と津波がパンダラに迫っているという緊急警報が入る。アキオはパニックに陥り、「やはり競争から逃げた報いだ!」と叫ぶ。

結:競争の無力化と、自然との一体化

テツ子はハンモックから降りず、目を閉じながら穏やかに言う。「アキオさん、私たちは何も失いません。」

次の瞬間、巨大な津波が島に到達する。しかし、パンダラは微動だにしない。島の周囲に植えられた聖なる竹「NCL」の根が、水面下で驚異的な速さで成長し、数千本の強靭な杭となって地盤を物理的に固定したのだ。

テツ子:「競争社会は、目先の利益のために土を削り、根を断つ。私たちは、竹の地下茎(ちかけい)という、目に見えない究極の生命のネットワークに国家の安定を託しました。自然と一体化することこそが、最も消耗しない防災戦略です。」

パンダラは津波の力を受け流し、周辺の島々が崩壊する中、竹の根に守られて無傷で安定し続ける。アキオは、競争の無駄だけでなく、自然の力に逆らうこともまた最大の消耗であったと悟る。

テツ子は、竹の杭が津波の衝撃で僅かに曲がったのを見て、「やれやれ、これではまた竹のメンテナンスという、最も面倒な仕事が増えましたね……」と呟く。アキオは競争心を完全に失い、テツ子の教えを請い、「消耗しないための最も重要な労働」である竹の杭の修復作業に献身することを決意する。彼は都会の消耗戦に戻る気力を失い、テツ子の教えを体現する新たな信者となるのだった。

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