梗 概
殺意の申請不備につき
復讐が合法化された近未来。
主人公・大石公男は、妻を奪われた恨みから、バイオテック企業の社長・吉良黒造に復讐を誓い、「西新宿ハンムラビセンター」に通う。全国のハンムラビセンターでは、動機や凶器、殺害計画などを事前申請することで、私的報復が認められ、費用の補填などを受けることができる。
復讐届の受理間近の大石は、センターの窓口前で困った様子の未亡人・堀部恵令奈と出会う。大石は堀部に復讐手続きの要点を教え感謝されるが、説明中にパンフレット記載の補助金をいくつか見逃していたことに気づき内心凹む。
晴れて大石の申請が受理されると、「共犯者ドロイド」が届く。共犯者ドロイドは、提出された申請書類を学習し、復讐をサポートしたうえ完遂後は切腹して自壊することで憎しみの連鎖を断ち切る役割を持つ。しかし大石の共犯者ドロイドは絶妙にポンコツで、「その凶器は許可外です」「その建物には侵入できません」など水を差すばかりで一向に復讐が進まない。どうやら届け出の際に、数百ページに及ぶ申請書類の圧に、大石が途中から内容を理解するのを諦め、事務AIでそれらしく埋め「えいや」で提出したことが災いしているようだ。
一方、吉良社長は復讐者への反撃が許される「決闘届」を首尾よく提出しており、決闘代行アンドロイドを差し向け、大石を窮地に追い込む。
そこに現れ大石を救い出したのは未亡人・堀部。堀部は申請を完璧にこなし、44体もの高性能ドロイドを手に入れていた。堀部は、夫は吉良の企業が引き起こした薬害によって亡くなったのだと語る。同じ仇を追う大石と堀部は、ともに吉良邸を強襲し吉良を追いつめる。
しかし土壇場で大石は「やっぱり復讐なんてしてほしくない」と堀部を止める。
すると堀部は微笑み、凶器で吉良ではなく大石を刺す。
混乱する大石の目の前に現れたのは、変わり果てた妻・朝乃。堀部の真の目的は、吉良の会社で薬害事件の原因物質を開発した薬学者である朝乃の目の前で、その夫・大石を殺すことだった。
朝乃は、不倫の末に大石の元を去ったのではなく、薬害の責任を一身に負わされ、無数の被害者たちからの復讐を受け続ける存在として生かされていたのだ。殺される度に何度も肉体と人格を再生される無間地獄の仕打ちを見て怒り狂った大石は、共犯者ドロイドとともに堀部に立ち向かう。
激闘の末に大石が死亡すると、目的を達成した44体のドロイドは切腹して自壊。
しかしすべてが終わったかに見えた吉良邸から、二つの人影が這い出てくる。朝乃と、大石の共犯者ドロイドだ。じつは朝乃は失踪前、大石が日常的に使っていた事務AIに細工を施していた。その事務AIが作成した復讐届の申請書類を通じて組み込まれたコマンドによって、共犯者ドロイドは、朝乃に無間地獄を与えるための人格再生システムを利用して、大石の人格をドロイド内にコピーした。
ロボットになった大石と朝乃は、どこまでも逃げていく。
文字数:1200
内容に関するアピール
役所やハローワークに行くと、手続きをミスっているに違いないと不安になります。家電や機材など大きな買い物をすると、どうせお得な割引やポイントのつけ方を見逃して損しているんだろうなと憂鬱になります。幼少期から、いつか何かの致命的なミスで逮捕されるんじゃないかと漠然と怯えています。
そんな事務手続き恐怖をテーマに、大石蔵之介たち47人の赤穂浪士が吉良邸に討ち入り、老人を殺した末に全員切腹するという、よく考えると無茶苦茶な『忠臣蔵』のモチーフを魔分解して組み立てました。
主人公の大石は、大阪人のくせにお得なポイ活などが苦手で、常に「細けえこたあいいんだよ」スタイルで生きている人間なのですが、その分奪われた妻は取り戻す、激怒したら勝率ゼロでも戦うなど人格的にシンプルかつバイオレンスであるところがチャームポイントなので、冷静にバイオレンスな堀部との対比を含めて、人物を魅力的に描きたいと思います。
文字数:395




