梗 概
グリーンフィンガー
庭師グリフは、死者の水晶体を使った光で育つ植物「ルーメリア」を扱うガーデナーである。ルーメリアの栽培には、水晶体から作った有機シンチレータの光が使用される。ルーメリアは、死者が生前に刻んだ記憶や行動、感情の傾向を独自のかたちで反映する植物である。育つ植物の花の色や形は、生前の人となりを象徴するように変化し、一人ひとり全く異なる姿を見せる。
ある日、足の悪い老女ダイアナと、その夫フレッドが店を訪れる。ダイアナは、自分の墓に植えるルーメリアを注文したいというが、フレッドは気乗りしない様子。温室には、茨のような茎に、ひじきが密集したような異様な花をつけるルーメリアが咲いており、フレッドはそれを見て顔を曇らせる。
ほどなくしてダイアナは息を引き取る。グリフが彼女のルーメリアを育てると、柔らかな光を放ち、半透明の花びらを広げた白い大輪の花が咲く。花は冷たく澄み切った朝露のような香りを放ち、長年ルーメリアを育ててきたグリフも、これほどの花は見たことはなかった。
フレッドは花を前にして涙をこぼす。ダイアナは本当に素晴らしい女性だった、私なんかじゃ釣り合いが取れなかったとつぶやくフレッド。フレッドはダイアナとの日々や、自分の過去を語り始める。フレッドの語る過去には、彼女を愛するがゆえに抱えてきた劣等感と、孤独の影が感じられる。フレッドは、グリフに自分のルーメリアも育ててほしいと頼む。きっと自分の花は、あの異様な花のようになるのだろうと、どこか諦めた表情を浮かべながら。
数日後、フレッドは自ら命を絶つ。グリフはフレッドからの依頼通り、彼のルーメリアを育てる。フレッドのルーメリアは、小さく可愛らしい白い花を咲かせる。その花は、ダイアナと同じく、柔らかな光を宿していた。
ダイアナとフレッドの花は、寄り添うように墓のそばに植えられる。夜になると二人の花は淡い光を宿し、風に揺れながら静かに寄り添っていた。
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内容に関するアピール
最初、グリーンフィンガーは、万博で隕石を触った男の人差し指が緑色になる、という設定から始めようと考えていました。そっからどう広げようかと思い、その指で何か触ると色々と良く育つ(鼻毛とか)という特殊技能を持たせようと思っていました。が、検索するとどうやらグリーンフィンガーは、園芸の才能がある人とかの意味があるらしく、今の方向性にたどり着きました。
私の中でルーメリアは、生きていようが死んでいようが、その人間の何かを使えば育つかなと考えています。
ただ、生きている人間相手だとクレームを言われるだろうし、なら水晶体にしておけば花を見れないし、なんなら死んだ人間にしておけば本人には絶対文句を言われない。
ということで、グリフは今のルーメリア育成法にしたのかな、という設定にしました。
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