東山神社の恋結びの水車

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梗 概

東山神社の恋結びの水車

東山神社の水車と言えば、高校生から恋愛成就の神様として秘密裏に崇められていた。なぜか。

恋愛マッチングアプリが危険であるとして法律で禁じられた世界。
野生化したマッチングアプリ『Fairs』が自己増殖し拡大していた。

Fairsは物理勧誘機能を持っていた。Fairs会員が街で見かけた人に好意を伝えたい場合、スマホをその人物に向けた上でボタンをタップする。もし、相手方もFairs会員なら、先方のアプリに通知が飛ぶ。もし相手がFairs会員でないなら、”天使”が派遣される。天使とはFairs勧誘ドローンである。その姿は本当に恋のキューピットの形をしている。その天使が好意を向けられた人の所に飛んでいき、『○○さんからいいねが届きました。詳細を見るには入会してください』というのだ。

この世界では、恋愛マッチングアプリは一種の麻薬のように恐れられていた。
つまり、きっかけはちょっとした好奇心であり、一度ハマると抜け出せず、その内実生活に支障をきたすようになり、もう二度とまともな恋愛活動には戻れなくなり、利用者であることが発覚すると社会的信用を失う。そういう位置づけである。
友人がマッチングアプリにかかわり始めたら、何とか説得して引き戻すか、関係を切るかの二択である。恋愛マッチングアプリが広まった社会はスラム街のように人々から見捨てられる。

舞台は地方都市の東山高校。
ラブレターを持った天使が窓から入ってきて、怖がった生徒たちが半狂乱で叩き落すシーンから始まる。
その日の下校中の浩司のもとにも天使が現れ、彼の目の前に手紙をぶら下げた。
お隣の美里高校のAさんからと書いてある。
『Aさんからのメッセージを閲覧するには10Fairsポイントが必要です』
『ポイントをためるには新たにお友達をFairsに紹介してください。男でも女でも構いません。あなたが紹介した人物が高い評価を得ると、連鎖的にあなたにもポイントが与えられます。ポイントはメッセージの閲覧やいいねの送信に使えます』

浩司は、異性から人気のあった友人をFairsに誘い込んでしまう。
浩司を入口に、東山高校全体がFairsに汚染されて行く。毎日ひっきりなしに天使がやってくる。

浩司は、テクノロジーにはテクノロジーで対抗することにした。東山高校生限定の恋愛マッチングアプリを作るのだ。浩司が作ったアプリは大変好評を受ける。このアプリの地縁に結び付いたアーキテクチャのおかげで高校生たちは身近な皆への関心を取り戻す。

しかし、天使軍団が浩司のサーバーに物理攻撃を仕掛けてくる。競合他社と認識されたのだ。浩司はサーバーと手回し発電機と衛星通信機を持って山に逃げ込んだ。逃走の果てでたどり着いたのは東山神社の水車の前だった。浩司は水車に発電機を繋ぎ、サーバーを回復したところで力尽きた。

文字数:1159

内容に関するアピール

一番怖いことについて考えた結果、恋愛マッチングサイトの利用履歴を晒されるでした。二番目は動画サイトの購入履歴。

ごく一部のIT企業がユーザーのかなり恥ずかしい情報を握ってる現代社会って怖いと思うんです。

でも、これって結構大きな社会問題になり得ると、いちITエンジニアとして思うんです。

タイトルは「楽園とはプライバシーの不在なり」にしようかと思ったけど自重しました。

文字数:181

課題提出者一覧