梗 概
塔
限定核戦争を経た世界で築かれた「核兵器なき相互確証破壊」を描くSF。
1.2070年 ナヴァンガ共和国
実業家 エイドリアン・ゴカレは、自社オフィスから、為政者の暴走により発生した限定核戦争で故郷の村が壊滅するさまを衛星映像で目撃する。核戦争を決断した為政者は生き残り、家族が死んだことをきっかけに、ゴカレは「核兵器なき相互確証破壊」計画を始動させる。
2.2105年 アメリカ
大統領のもとに、宇宙事業とナノマシンを用いた健康サービスで世界一の大富豪となったゴカレから連絡が届く。
「3か月以内に核兵器を全廃し、 “塔” を建てよ。さもなくば、世界中の全ての国家の為政者および軍関係者を心停止させる」
ゴカレが開発したナノマシンは難病を根絶したことから世界中で普及し、ほぼ全ての人類が生後すぐにナノマシンを注入される。安全とされていたナノマシンには、ゴカレのみが操作可能なバックドアが仕込まれ、任意の人間を殺すことが可能になっていた。
副大統領が心停止させられるのを目の当たりにした大統領は、ゴカレの逮捕を命じるが、ゴカレは火星に逃走済み。「火星を攻撃した時点でナノマシンを作動させる」とのアナウンスが行われる。
同様の命令が全核保有国に送られ、世界中に「塔」が建てられる。世界は「核兵器なき相互確証破壊」体制に移行する。
3.2130年 日本
2120年のゴカレの死から10年。「塔」による相互確証破壊体制は続いていた。
「塔」とは、主要各国の軍事拠点数か所に建てられた、高さ150mの建造物。塔の最上部には「平和維持信号」を発する発信機が置かれており、これが世界中の「塔」同士で送受信されている。発信機が破壊され、平和維持信号が確認できなくなった場合、5分後にあらゆる国で役職就任時に登録されている「為政者および軍関係者の全員」が心停止する。
為政者が「塔」に命を握られたことで、人類は核による絶滅から解放された。
「塔」の破壊が全世界に大きな影響を与えることから、「塔」は各国の軍により厳重に守られている。
日下は「塔」の警備を行う軍の一員。ある日、武装勢力により「塔」が占拠される。世界中の為政者と軍関係者を人質に、権力を要求する武装勢力。日下は同僚の守屋らとともに隊を組み、塔に潜入し、武装勢力を排除するよう命じられる。
隊員を失いながらも、日下と守屋の2人が塔の最上階にたどりつく。
守屋が深手を負うも、なんとか武装勢力を倒し切る。世界平和が戻ったと思ったそのとき、守屋が発信機を撃ち、破壊。為政者および軍関係者の全員の心停止が確定する。
守屋は「世界が混沌に戻った方が得をする民間人」のスパイで、有事に発信機を壊すよう命じられていたのだ。守屋は失血死する。日下は、5分後に迫る死に絶望しながらも、壊された発信機の内側に、ゴカレが書いた文字を発見する。
「おめでとう。君たちは再び、絶滅する自由を手に入れた」
文字数:1190
内容に関するアピール
核兵器による相互確証破壊、つまり「核保有国同士がお互いを完全に破壊できる能力を持つことによる抑止」が怖いです。
為政者の暴走やうっかりミス、機械の不具合によって人類が滅亡する可能性がある上、実際にそれが起こりかけたことがある事実(スタニスラフ・ペトロフの件)に恐怖します。
そこで、今回は「SFのガジェットを使って、今よりもマシな相互確証破壊を作ることは可能か」という問いを立てました。
「国同士が戦争するのを止められる」かつ「発動しても人類滅亡には至らない」システムを考えてみたのですが、ナノマシンという強力なガジェットを使っても、誰も不幸にならない仕組みの実現は中々難しそうに思えます。今回は政治家と軍関係者にとてつもない負担を強いるディストピア的な仕組みが誕生しました。
実作では「占拠された塔に潜入する直前の日下」をアバンタイトルとして配置し、その後は時系列に沿ってお話を進める想定です。
文字数:394




