梗 概
みどりのベスティ
美登里は、親友の月子に恋人の海斗を奪われ、さらに派遣契約も切られて無職となった人生最悪の日に、空から降ってきた不思議な種を拾う。孤独と不安に押し潰されそうな彼女は植木鉢にその種を植え、まるで友人に語りかけるように世話を続けた。やがて発芽した葉は二つ。双子葉類のようだが、二葉のまま成長が止まり、正体は分からない。ある朝、芽は忽然と消え、代わりに緑色に輝く人間がベランダに立っていた。「僕は惑星Pから来た植物人間です。光合成させてください」――本来は、ツタのような姿なのだが、P星人の体を構成している緑色の細胞は擬態能力があり、人間の姿になれるのだ。ただし、太陽光線を浴びると光合成により緑色に光ってしまう。
美登里はP星人を「双葉」という名前で呼ぶことにした。双葉は、「夜なら働ける」とホストになり、家計を助ける。光合成で生きる彼は酒も飲まずに接客でき、瞬く間に売れっ子となる。夜の街で繰り広げられる騒動はコミカルで、美登里はトラブルから彼を守り、友情を深めていく。ある朝、双葉は美登里に微笑みながら言う。「美登里はぼくのベスティだね」。ベスティというのは「ベストフレンド」という意味のスラングで、帰国子女のホスト仲間から教えてもらったのだという。
一方の月子は、海斗とすでに別れていた。彼女は美登里の恋人を奪ったのではなく、美登里が幸せそうにすること自体を許せなかったのだ。月子にとって美登里は常に「自分より下」でなければならない存在だった。だが、美登里は落ち込むどころか、イケメンと楽しそうに暮らしている。月子はそれが耐えられず、匿名のSNSアカウントを作り、美登里を貶める投稿をする。匿名性に守られた悪意は際限なく膨らみ、やがて美登里のアパートが特定され、双葉の客のひとりが美登里を襲撃する。双葉は美登里の盾になって刺され、美登里の腕の中に倒れる。双葉の体は二葉の子葉の姿に戻り、萎れていった。泣きながら萎れた子葉に謝り続ける美登里。すると、萎れた子葉が美登里に囁いた。「もうすぐ僕は枯れて死ぬ。僕が死ぬと、地球を侵略するために船団から沢山の種子が地球に落とされる。落ちてきた種子のひとつを拾って、ぼくと一緒に植木鉢に埋めて。急いで」萎れた子葉が茶色く変色した。空を見上げると、無数の種子が空を埋め尽くし、地面に降りてくる。美登里は落ちてきた種子のひとつと萎れた子葉を家に持ち帰り、植木鉢に埋め、双葉の名前を呼んだ。すると、植木鉢から双葉が蘇った。正しくは、種子が双葉の記憶を継承して芽吹き、急速に双葉の姿になったのだ。双葉は「仲間を連れて、星に帰る。君のことは忘れない」とツタ状の姿になり、地表に芽吹き始めた同胞たちを自分のツルに絡め取った。双葉のツルは空に伸び、やがて何かの光に吸い込まれていった。
数日後、植木鉢に小さな芽が生えていた。美登里はその芽を双葉と名付け、大切に育てることにした。
文字数:1198
内容に関するアピール
書いてみないとわからない派なので、梗概は苦手です。いつも「こんな感じ」的にまとめていたのですが、もう少しじっくりと書いてみました。
今回の梗概は、「何かの種子が空から降ってきて、植木鉢に植えて育てたら、植物系の異星人だった」という思いつきがあり、不幸のどん底にいる主人公と植物系イケメン異星人の『E.T』のような友情物語を想定。次に「地球を侵略するために種子が空からたくさん降ってくる」というシーンが浮かんで、そこに結びつけるために、主人公を追い詰める悪いやつ(月子)のエピソードを考え、ラストを試行錯誤。300文字ほど削って完成となりました。
実作は、「SF的な描写を面倒がらずにたっぷり入れる」ことを心がけて書いていきたいと思います。
※今回の梗概は、Microsoft Copilotとやり取りをしながら作成しました。
タイトル:「みどりのマブダチ」というタイトルだったのですが、ネットで「bestie」というスラングを見つけたので、そっちのほうがイケてる気がして変更しました。
文字数:437
みどりのベスティ
眠れぬ夜を過ごし、どうせなら朝から酒など飲んでやるとつまみの買い出しにコンビニまで出かけた五月四日の午前五時。大原美都里は、「ああ、無常にも5月の空は快晴だぜ」とやさぐれた気分で生まれたばかりの青い空を見上げた。空と太陽はすでに夏スタンバイ。からりと晴れた5月の朝は大好きだった。けれども、今はちょっとウザい。眩しすぎる。と、100円ショップのサンダルが硬い何かを踏んだ。胡桃の種のようだが、硬い殻のてっぺんから二葉の芽がでている。何かの種子だろうか。芽吹いた種が落ちているというもの少し違和感があるが、世界は美都里の思いもよらないことが起きるのだ。そのまま放置して、美都里はコンビニへと向かった。コンビニでありったけのスナック菓子とホットスナックを買い込んで再び先程の路地に戻ると、カラスがいた。嘴の端に緑。あの種だ。葉っぱは消化されてカラスの養分となるのだろう。種はそのまま糞と一緒に放出され、繁殖する。植物と鳥類のウィンウィンな関係。ああ、自分も種になってカラスの体内で運ばれたい。ここではないどこかで糞とともに落とされて、別の人生を歩きたい。カラスと目が合った数秒で、美都里はそんなことを考えた。考えてみたらその種が羨ましくなって、憎たらしくなった。なので、ここではないどこかへと向かうことを阻止することにした。美都里は、コンビニのビニールから唐揚げを一つ取り出し、カラスに投げた。カラスは咥えていた種を落として唐揚げを見事にキャッチ。種よりそっちが旨いと瞬時に判断したようだ。そして、そのまま飛び去っていった。
「二葉よ。悪いがおまえは私の道連れだ」
美都里は悪い顔で二葉付きの種に話しかけ、自宅へと連れて帰った。植木鉢などという気の利いたものはないので、とりあえず使っていない洗面器とスコップ代わりのレンゲを抱え荒川の河川敷へと向かった。洗面器に河原の湿った土を入れ、種を植えた。土からちょこんと出た緑色の二葉が可愛らしい。美都里はその芽を「ふたばっち」と名を付け、たまごっちのように育むことにした。
美登里が眠れぬ夜を過ごし五月四日の朝からやさぐれた気分でいたのには理由がある。簡単に説明すると、ゴールデンウィーク直前に五年間付き合っていた岡田周平と別れたのだ。もう少し説明すると、別れた理由は周平の心変わりで、さらに説明すると心変わりの相手は木内香苗という美登里の親友で、二人がくっついた原因を作ったのは美都里だった。もう少し補足すると、今を遡ること3月のホワイトデー。美都里は、周平とデートの約束をしていた。周平は「予約のとれないフレンチレストラン」を予約してくれていた。しかし、美都里はドタキャンをせざるを得ない状況に陥った。美都里の職場は小さな印刷会社で、美都里の仕事は印刷物のデータを作成する仕事なのだが、営業マンが納期を間違えたのだ。一週間後だと聞かされていた納期が3日後になり、徹夜でデータを仕上げなければならない。もちろん、周平は理解してくれた。五年目ともなると仕事が優先という暗黙の了解が成立する。しかし、問題は「予約の取れないフレンチレストラン」の予約だった。当日キャンセルの場合は、全額支払いとなる。それはもったいない。というわけで、美都里は自分の代打に香苗を指名した。もちろん、周平と香苗は初対面ではない。お互いに話は合うけれど異性としてはタイプではないという点で、全く持って心配のない間柄だった。さらに、香苗はバレンタインデーに彼氏と別れて落ち込んでいるところだった。美味しい料理で元気になってくれたら美都里も嬉しい。周平も香苗なら気心が知れているし、香苗も大喜びで引き受けてくれた。お陰で美都里は仕事に集中できて、無事にデータを納品し、会社を救った。三人にとってウィンウィン。のはずだった。馬鹿だった。まさか、周平と香苗がそうなるなんて。で、五月青天の霹靂でやさぐれる女のいっちょうあがり。
「ふたばっち、私は一人ぼっちなのだよ」
こうして美都里は今、洗面器の二葉に話しかけ、コンビニのスナック菓子とホットスナックでとっておきの日にとっておいたボルドーワインを飲んでいる。やさぐれてはいるが、それは寂しいからで怒りや憎しみなんてものはない。むしろ、大好きな二人だからこそ、幸せになってほしい。だけど、めちゃくちゃ寂しい。
「ふたばっち、こんな洗面器なんかに植えてごめんね。でも、少しだけ一緒にいておくれ。元気になったら、荒川の河川敷に植え替えてあげるから」
やさぐれて呑んだくれたゴールデンウィークが明けて、日常が始まる。美都里は洗面器の二葉に水をやり、日当たりの良い窓際に置いて仕事にでかけた。恋人と親友を失って出来た心の隙間は、仕事に没頭することで埋めるのだ。京浜東北線で荒川を渡り、赤羽駅からバスに乗る。大手印刷会社の敷地の裏手にある小さな二階建ての建物が「村上印刷」だ。美都里はDTPオペレーターの派遣社員として表にある大手印刷会社で働いていた。「村上印刷」の三代目社長であり営業マンである村上太と出会ったのは、その大手印刷会社だった。大手の印刷工場が捌ききれない案件を村上印刷が引き受けていたのだ。校了したレイアウトデータを印刷用のPDFデータにして村上印刷のサーバにアップする。それを担当していたのが美都里だった。十年前、大手印刷会社との派遣契約更新の時期に、美都里は村上から「うちの正社員にならないか?」と声をかけられた。1年から2年のスポット契約で働くことに疲れていた美都里は、渡りに舟とばかりに飛びついた。DTPを中心とした制作部門を立ち上げたばかりということもあり、村上は美都里を主任として迎えてくれた。紙媒体の仕事は激減しているけれど、資格学校の教材や教科書の仕事が新たに入り、経営はなんとかなっているらしい。ボーナスが減ったのは仕方がないけれど、給与が滞ることはない。滞ることはなかった、これまで一度も。いつものようにバス停から歩いて二分。「村上印刷」の二階建ての建物の前には、人だかりができていた。何事だろうか?
「大原さん!」
と美都里を見つけた事務員の朝比奈さんが真っ青な顔で走ってきた。
「タイヘンなの。会社、潰れちゃった!」
※ ※ ※ ※
「親友に恋人を寝取られる――巷でよくある話である。社長が夜逃げして会社が倒産する――巷でよく聞く話である。けれどもその2つが一人の人間のみに同時に起きる確率は、決して高くないだろう。ふたばっち、ある意味において私は相当引きの強い人間であると言えるよね」
美都里は洗面器の二葉に話しかけていた。二葉のついた種を拾って二週間が経過しているが、二葉はまだ小さな緑の葉っぱのママで、周平と香苗からの連絡は無く、村上社長の行方は分からない。詳しいことはわからないけれど、今朝離職票が届いた。ということは、ハローワークに行けば会社都合で失業保険の手続きができる。全く何もやる気が起きない。これが五月病というものだろうか? 二葉に話しかけることで、美都里はかろうじて正気を保っている。
「ふたばっち、君が何の植物であるのか調べてみたのだけれど、分からないんだよね。早く大きくなって、正体を見せておくれ」
洗面器がいけないのだろうかと、美都里は百円ショップで植木鉢を購入し、二葉を植え替えた。種からは根がでているわけではなく、相変わらず胡桃の殻のまま。謎である。この植物は、どうやって水や養分を摂取して生きているのか?
「君は、謎めいた生物だねえ、ふたばっち」
緑の葉っぱをつんつんしていると、携帯電話が鳴った。なんと、香苗からだ。音信不通を淋しく思っていたくせに、いざかかってくると「今さら何だよ」と思ってしまうのはナゼだろう。ていうか、本当にどういう用件なのだろう? 逡巡しているうちに、電話が切れた。覚悟を決めてかけ直す。
「美都里、大丈夫? ニュースで見たよ。会社、タイヘンだったね」
男を奪った張本人が「大丈夫」とはいかがなものか。というか、その前に話すことがあるのではないか? 鼻息荒く黙っていると、香苗が何かを察したようだ。
「あ……やっぱり、まだ怒ってる? ごめんね。周平くんを美都里から奪うつもりなんかなかったんだよ。まさか、彼が私を好きになるなんて想定外だったんだ」
それは私のセリフだ。てか、奪うつもりがないといいつつ、しっかり奪っているよね? 想定外なら付き合うなよ。 「黙ってないで何か言ってよ」と香苗に逆ギレされて、美都里の口から出た言葉は……「周平と、うまくいってるの?」。
アホである。文句をぶちまけるべきであるのに、何が「上手く言ってるの?」だよ。そこから軽く二十分、免罪符を得たとばかりに香苗の惚気を聞かされ美都里は激しく後悔した。
「周平くんも心配していてね。でも、思ったよりも元気でよかった。美都里ならきっといい仕事見つかるよ。仕事が決まったらお祝いしようね」
軽やかな声で香苗は通話を終了させた。香苗には一ミリの悪気もない。そういうヤツだった。いつも明るく屈託無く誰かに忖度することのない香苗が、私は大好きだったんだよね。
「いや、悪気はなくても悪意があるよ。ぼく、彼女のこと嫌いだな」
だから、悪意じゃなくて無邪気――って、え? 僕って? 背後に聞こえた男性の声。恐る恐る振り返ると、緑色の髪の毛のイケメンが全裸で腕組して立っている。人というものは、本当に思いがけないことが起きると思考停止になるものだ。
「甘いなあ、美都里は。だから、ナメられる」
緑髪イケメン全裸、が人差し指で硬直している美都里の頬をツンツン。ツンツンじゃねえし。誰だてめえ。
「いや、あの、どちらさまでしょう?」
美都里は携帯電話の非常通話をかけようと身構えつつ、念の為聞いてみた。
「ぼく、ふたばっちだよ。正体を見せろといったのは、美都里じゃないか」
床に置いていた植木鉢。二葉が、ない。けれども、種は、ある。
「えっと。ふたばっちの正体って……」
「遠い宇宙からやってきました。地球の生命体では在りません。簡単にいうと、宇宙人です。その節は、カラスから救ってくれてありがとう。この度は、弱っていたぼくに水を与え、日光を当ててくれてありがとう」
人生には、思いもよらないことが起きる。恋人を親友に寝取られたり、社長が夜逃げして無職になったり、拾った二葉付きの種子が宇宙人だったり。
ふたばっちは、地球に派遣されてきた惑星調査員だという。ふたばっちの惑星は地球に似た環境なのだが、進化したのは植物で、いうなれば人間的な植物とでもいうのだろうか、とにかく人の形をした植物なのだ。胡桃のような種は、宇宙船であり生命維持装置のようなもので、とても高度な技術で宇宙空間を移動できる。地球の大気圏を突き抜け、日光を取り込むために二葉を装置の外に解放し、二葉の浮力で地上に舞い降りた。本当は、荒川の河川敷に到着予定だったのだが、空気の流れが想定外に早くコンビニ近くのアスファルトに不時着してしまった。人の姿に戻るためには十分な水と日光が必要で、あの時カラスに食べられていたら、そのままカラスの養分になっていたのだ。ふたばっちは、自分の惑星の名前と本名を教えてくれたのだが、とても人間が発音できる名前ではなかった。なので、ふたばっちと呼ぶ。ちなみにふたばっちは、美都里が話しかけ続けてきたことで日本語をマスターしたらしい。ふたばっちいわく、「植物は話さないけれど耳がいい」そうだ。クローゼットから周平が残していった下着とスウエットの上下を取り出して、ふたばっちに着せた。先祖が植物であるふたばっちの下半身に人間のような生殖器はないのだが、それでも全裸でいられると落ち着かない。
「調査が終わるまで、もうしばらく、ここにいてもいいかな?」
若芽の二葉でも、イケメンの宇宙人でもどうでもいい。兎に角、今ひとりにはなりたくない。
「もちろん。ふつつかな人類ですが、どうぞよろしくおねがいします」
美都里は、三つ指ついてふたばっちに頭を下げた。
同居人ができたことで、美都里のモチベーションが少し上がった。翌日美都里は最寄りのハローワークへと向かった。結論、失業手当で一人暮らしの生活費は賄えない。一刻も早く仕事を見つけなければ。けれども世の中そんなに甘くない。DTPオペレーターの正規雇用という案件は中々ない。あるとすれば「初心者歓迎」という安い報酬案件。かといって、時給が高くてもスポットでがっつり働かされて3年後にリリースされてしまう派遣社員に戻るつもりもない。中堅アラサー女子で条件の良い就職先というのは、早々に見つからないものだ。
業務用スーパーで安い食材を購入して自宅に戻ると、全裸のイケメンが窓辺でまどろんでいた。もとい、ふたばっちが、生きるための食事、つまり光合成に勤しんでいた。眼福。眼福、と唸ったけれども美都里にとってイケメンのふたばっちの裸体は性欲に直結したソレではなく、美術品などを愛でる心境に似ている。というところで、美都里は思索にふける。そういえば、性欲ってなんだろう。周平と知り合ったのは居酒屋だった。香苗の誕生日を祝う二人だけの女子会で、となりのテーブルの男性ばかりのグループに声をかけられた。その日は周平の誕生祝の飲み会だったらしい。野郎ばかりの飲み会に嫌気を指したメンバーの一人が香苗に一目惚れ。香苗は昔から男ウケが良いと言うか、そういう男心をソソるタイプなので。そいつが香苗をフッたおかげでホワイトデーの悲劇が起きるわけなのだが、そういう場で私は周平と出会った。地味でオタク。アニメの話で盛り上がり、オフ会に誘ったけれど二人きりになっても特にどうのこうのはなく。付き合ってくださいといわれたのも意外だった。けれども、性に奥手なタイプということは、性に奥手な私には好都合だった。ぶっちゃけていうと、一応そういう行為はしたが、未だにセックスは苦手だ。本能のままに奔放に「だって、うずくんだもん」と言っては男から男へと渡り歩く香苗は、不思議な存在であり羨ましい存在でもあった。で、自分と同類だと思っていた周平は、香苗に惚れたという。断言するが、酒飲み友だちとして話が合うといっても周平の地味でオタクな世界観を香苗は絶対に理解できない。なぜなら、美都里の地味でオタクな世界観を未だ嘗て香苗が理解したことなどなかったから。でもね、香苗ほどのナイスバディで可愛い女子から言い寄られたらイチコロなのは理解ができる。けれどね、性欲を超えた絆が周平との間にはあったと思っていたんだよね。
「哺乳類だから仕方がないよ」
いつの間にか、日光浴から目覚めたふたばっちが、衣服を身に付けながら話している。てか、何故に美都里の脳内会話がふたばっちに知られているのだ?
「えっと。まあその、植物にはそういう能力があるのです。人類の脳波というか波動をね、読むんだよ」
十分に光合成されたふたばっちは、緑色の髪の毛をふさふさと揺らしながら美都里に言った。
「哺乳類の雄は所詮雄なんだよ。性欲の発動に個体差は合っても、種の保存という本能がある限り、雄は雌を求め交尾するものだ。君は、種の保存のために交尾を行ったのかい? もしかすると、それがあたりまえのことだからとそれほど望んでいない性交を義務的に受け入れただけではないのかい? 性悪なアイツは、本能で生きている。そんな雌と交わったら、雄は見事にとりこまれる。美都里に足りないのは、種としての雌であるがゆえの本能的な魅力だ」
ガツンと頭をカチ割れた。周平が香苗を選んだ理由が種の保存。なら、もう叶わないよ。
「植物の生殖活動は平和だよ。ぼくらの種族は、成熟すると自分の中で雄花と雌しべが現れて、世話焼きな蜜蜂ババアが受粉を促してくれる。果実として結実すると鳥たちが食べ、その種子が世界中に散布されるんだ。すべて自己完結で世界が回っている。だから、淋しくもない。美都里が望むのであれば、僕らの星に招待するよ」
詳しくは聞かなかったけれど、ふたばっちの惑星の科学技術をもってすれば、人類一人ぐらいは搬送できるらしい。人間的植物の惑星に舞い降りる人類第一号。悪くない。そのためにも、ふたばっちの調査をヘルプしなければ。仕事を見つけなければ。と、心を読み込んだふたばっちが言った。
「ネットで知ったのだけれど、夜だけ働く高額な稼ぎの仕事があるらしいね。ぼく、それならできるよ。光合成しない夜なら、人間と変わらない姿で働けるからね。同居人として、美都里を助けるよ」
イケメンで夜仕事。しかも人類の調査サンプルも集められるとふたばっちはノリノリだった。美都里の仕事が決まるまで、ふたばっちには稼いでもらいたい。経験値の少なさに関しては心配があったが、背に腹は代えられない。こうしてふたばっちは、歌舞伎町のホストになった。
第一章完――――――次回 「歌舞伎町無双編」に続く。
<未完で提出の言い訳>
締切までラストに間に合わず。長くなりそうとうこともあり、設定を気に入っているので、未完でもここまでの感想が聞きたくてアップしました。よろしくお願いいたします。
文字数:6975




