いつか国境でランチを

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梗 概

いつか国境でランチを

主人公は環境運動家のアスカとパートナーのジェシー。

舞台は未来の東アジアのどこか熱帯化している場所。侵略をうけ、いくつかの国に支配されて分断した、どこか日本らしき雰囲気がある場所だが、日本なのかは最後まで明らかにはならない。

廃棄物が積み上げられた100mちかい高さの巨大なゴミ山が視界いっぱいにそびえ、そのゴミが自然発火した煙と、その廃棄物を燃やし、そのあたりでとれる奇怪な小動物の肉を大量に揚げる麓集落の、バラック街から出る煙であたりはかすんでいる。

この時代、クリーンなシティ地区に住むものたちにしか文明の恩恵はない。貧しい集落は近代以前の生活に戻っている。シティは処理しきれない汚染ゴミを貧しい集落に押し付けている。

調査のため海外のシティから漁船に密航してやってきた環境運動家のアスカとジェシーは、この汚染地帯のビーチに降りたつが、この調査をいいだしたジェシーは「行かなければならないところがある」と出かけたまま行方不明に。アスカは痕跡をたどり、ジェシーが消えたバラック街をさまよう。

汚染で皮膚がただれた野良犬の集団に襲われかけたアスカは、肉揚げ工場の片隅にあった食堂に逃げ込む。

現地の人々の話を聞くうち、ここで内戦が始まっていることがわかる。皆の顔に汚染による病の兆候が。シティが憎まれていることもわかってくるが、庇ってくれる土地の女たちによって地元風に変装し、ジェシーの捜索を続ける。

民兵のような暴徒に次々と殺されていく人々。アスカはジェシーとトランシーバーのような機械で連絡を取ろうとするが、あるとき微かな声が聴こえる。

「国境で…」

戦況は複雑化し、誰か敵で誰が味方かまったくわからない中、アスカはジャングルの奥にある国境をめざす。バラック街からついてきた痩せた少女がひとり。得体が知れないところがあるがガイドは彼女しかいない。国境付近の集落まで案内するという。

だが案内された集落は虐殺で全滅している。迫り来る追手も暴徒か兵士か区別がつかない。どうやらゲリラ化した自立型ロボットが内戦に関わっていることもわかってくる。

少女は次第に怪しさを増し、不信感が増すばかりのアスカは少女をだしぬき、1人国境に向かおうとするのだが、ジャングルは深く、異様な動植物だらけで道に迷う。

さらに奥に奇妙な建物が。それは数百年前に遺棄された核廃棄物貯蔵施設の廃墟だった。そこには悪徳業者の仕業か…コールドスリープ処理された富裕層の棺のようなカプセルも腐敗し、姥捨のように大量に廃棄されていた。

そのときジェシーからまたかすかな通信が。彼も国境をめざして迷っている。迫る暴徒やドローン。絶望的な状況の中、2人は果たせそうもない約束を口にする。

「いつか…国境でランチを」

アスカの足元にあの少女の遺体が投げ込まれ、核廃棄物施設の入り口が、爆発で塞がれ、暗闇がおとずれる。

文字数:1179

内容に関するアピール

このテーマで思い出したのが、小学生のころ家にあった『少年少女朝日年鑑』の…首とわずかな皮だけになった死体を、にやにや笑いながら持ち上げる米兵の写真で…。そのうすら笑いが本当に恐ろしかった。

次に思い出したのが『炎628』や『キリング・フィールド』という凄惨な映画でした。

昔から架空のモンスターより、こういう人の残虐が本当に怖くて。いま毎日のように見聞きする、タガが外れたように荒れはじめた世界を…貧富の差による深刻な環境汚染や差別、内戦や侵略、暴徒や虐殺の恐ろしさをSFに。

病院や記者が狙われるような闇がとけこむ、終わりなき悪夢のような物語を『ブッシュ・オブ・ゴースツ』のようなマジックリアリズムで仕上げていきたいと思います。

文字数:309

課題提出者一覧