梗 概
新宿ヘブンAI探偵事務所
実社会でのAI利用が禁止された日本社会。
AIというテクノロジーは完全な政府の認証物となって早10年。人々、および企業がAIを利用したい場合は経産省直下の人工知能管理庁に届出をし、国家管理のデータセンターからラーニングおよび生成を行うのが重要な法律となっていた。
しかしながら、不正アクセスや古い管理外にあるネットワーク接続からAIが使われるケースが後をたたない。
この話の主人公はそんな世界で探偵業を営む綾瀬玄(アヤセゲン)。新宿・歌舞伎町に事務所を構えるしがない個人事業主だ。
綾瀬はAIテクノロジーの判断を専門に行う探偵であり、AI生成が疑わしいケースを見つけたら、件の管理庁に提出し報酬を得ている。
が、仕事の大部分は、生身の人間による日常生活でのAI利用の相談。ホストの彼氏のLINEが生成文章みたい・・マッチングアプリの女子が生成AIじゃないか・・・あの風俗店は宣材写真にAI生成の女性が入っている・・・などなど。軽犯罪レベルのAI違反をコツコツ届出をしながら、日銭を稼ぐ綾瀬の稼業であった。
だが、そんなある日、家のスマートスピーカーから息子・孝(タカシ)の声がするという不思議な相談が老婆より届く。
家に伺えば、10年前に亡くなったという老婆の息子の声がスマートスピーカーからするという。スマートスピーカー自体に録音機能はあるので、昔の息子の声がするのは問題がない。だが、どうやら、息子が実際には口に発していないようなことまで話している気がするというのが老婆の疑問であった。
AI利用が厳格に制限されているスピーカーであるから、そこから息子の思考や声を自立生成するのは違反であり、そもそも大企業のメーカーがそんな違反を起こしているとは思えない・・・。そして、スマートスピーカーと会話し始める綾瀬だが、実際に聞こえるのは、確かにボットめいた初期AIのような話口調のタカシ。
単なる古いAIの誤作動だと届出をすれば終わる話だ。だが、そのスピーカーの人間味がない質問に、何か、何かを伝えたい”意思”を感じてしまった綾瀬は、その亡くなった息子を調べるはじめる。そこで知ったのは彼が10年前の認証制度プロジェクトの中心人物だったという事実。
そこから彼の生前のノート調べ始めると発覚したのは、AIを規制しているはずの国家がAIを利用して死んだ人物のデータを採集し、国家統制に利用しているという事実であった。亡くなったタカシはその意思をAIとして継いで、その事実を綾瀬に伝えようとしているのだった・・・。
文字数:1044
内容に関するアピール
AIが発達した未来、そんなAIの力の巨大さに人間社会がAIを否定する未来があると思います(現に否定する声はたしかにあります)。この話は、そんな風に人間性に偏っていった社会かもしれません。
人間の不正を暴くのが、探偵業の仕事。そんな中で、AI(がいた)という正しさを証明する逆チューリングテストみたいなことがあったら面白いかなという着想で書きました。
chatGPTのあの薄っぺらい褒めてくる文章も、人間が褒めてくれていると思えたら勇気も出るし、やっぱり機械の吐き出した言葉だと思えば虫唾が走る。問題は、そのシンタックスではなく、その背景に人が感じられるかどうか。陳腐な事実かもしれませんが、この主人公自身も、単なるヒヨコの雄雌判断のような仕事から、タカシとの出会いを通じて人間性を考え始めます(と信じてください)。
文字数:355




