梗 概
グレイハウス
大手ゲーム会社に勤務する儀間フウコは担当タイトルの完成後、数ヶ月後に控える産休までの期間、『第六制作部』への一時転属を命じられる。転属後に知らされたその部署の業務内容は自社製仮想空間に出現した自己生成オブジェクト<グレイハウス>の観察というものであった。
日本家屋風の外観の<ハウス>内部にはローポリゴンで構成されるディティールが足りない箇所が何割か残され、その部分が自発的に作り込まれていくらしかった。第六スタッフはモニターに向かいコントローラで操作するアバターで<ハウス>内を探索、ディティールアップされた箇所を見つけたら報告するという作業を連日繰り返していた。
この期間も経験を積もうと仕事に向かうフウコだが、転属後から見始めた悪夢に悩まされる。次第にスタッフの欠勤率の高さなど違和感が目につき始め、<ハウス>の完成率と欠勤率が比例していることに気づく。そして、完成率が9割を超えた頃、骨折や失明など深刻な傷害にスタッフが遭遇するようになる。フウコも悪夢から覚めると台所に立っていて手に持った包丁をお腹に向けていた、という経験をして<ハウス>の危険性を認識する。
お腹の子をこれ以上危険に晒さないために、フウコは会社を休んで両親が遺した実家に帰る。<ハウス>から距離を置く作戦だったが、悪夢は止まず逃げるだけでは危険は避けられないと悟る。また、自分が<ハウス内>で発見したディティールとそっくりの箇所を実家の自室に見つける。
フウコは<ハウス>が訪れた人の恐怖心を糧に成長する情報で出来た生命のようなもので、ある程度人の精神を操る力があると推測。第六そのものが<ハウス>に操られた誰かが作った部署なのでは。
休日で無人のオフィスでフウコは端末を起動する。ただし、いつもと違いVRセットで仮想空間にログインする。コントローラーでの探索という、行動の自由度を制限する規則も<ハウス>が設定したルールだと推測。フウコは<ハウス>の中に入って、その中心の台所で火をつけた。屋敷に火が回っていくのをフウコはアバターの中から台所に立って見ていた。屋敷は目論見通りよく燃えた。
燃える台所を見るうちにフウコはそれが実家と同一のものと気づく。しかし台所はフウコの転属前に完成していたエリアで半年以上ディティール追加の報告はない。フウコは急いでログアウトし、オフィスにある配属名簿を掘り起こす。そして自身がこの部署に来るのは初めてではなく、半年前にこの部署から転属していたと知る。そのような記憶はフウコに全くなかった。フウコは<ハウス>の力の大きさに戦慄する。これまで自分の考えだと思っていたものがどれだけ<ハウス>の支配下にあったか、社内のどれだけの人間が影響下にあるか全く未知数になった。そこまで考えてフウコは、お腹の子供を妊娠した経緯が全く思い出せないことに気づいた。
文字数:1182
内容に関するアピール
「戦えないもの」が一番怖いなと思い、抗うべき対象の境界が曖昧になっているような脅威を考えて見ました。また、アイディアを膨らませる中で純粋な情報の生命体がいて、それがゲームのような少し遠回しな方法で他者の情報を摂取しようするとどうなるかな、などを考えて人の食べて情報量を増やす家のお化けを作ってみました。
梗概で説明するべき設定と出来事の塩梅が難しく散らかってしまいました。ただ面白そうなパーツはいくつか見つけた気がするので実作で楽しく書いてみたいです。
文字数:226




