デッド・ドリーム

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梗 概

デッド・ドリーム

【2025年】
 『令和の預言者』と呼ばれている男性遺体が大阪の万博会場で発見される。彼は「人類は五十年後に滅亡する」と予言していた。検死解剖の結果は、全身の骨と内臓が破壊されているが外傷は無し。殺人事件として捜査されるが未解決のまま五十年が過ぎ去る。

【2075年】
 日本はさまざまな問題を抱えながらも紛争が続く諸外国と比べれば平和だった。世界中のAIは繋がり、もはや人間には理解できない会話をしている。そのことに誰も気づいていない。
 死者の夢(dead dream)技術が実用化されている。このDD技術は死者の残留思念を音声データとして記録する。残留思念は死後約一時間しか存在できないので、病気や高齢など、あらかじめ死亡が予想される場合にだけ本人及び家族の了承を得て記録される。殺人事件などの被害者の残留思念を記録することは難しい。

警視庁捜査一課の楢崎浩二警部補は未解決事件の再捜査を命じられる。それは五十年前に発生した『預言者殺人事件』だった。
 事件発生当時十歳だった彼はその事件を覚えていた。万博にも家族で行った思い出がある。そう言えばあのとき不気味な男に会ったなぁ、と思い出しながら捜査記録を読む。その中に『被害者遺体、盗難。発見されず』とある。それ以降、捜査は進展せずに現在を迎えている。
 DD技術を利用できれば、すぐに解決するだろうけど、五十年も昔の残留思念なんて消えている。五十年前にDDがあればよかったのに、と楢崎は思う。それにしても、誰が遺体を盗んだんだ? 再捜査は難航していた。そんな彼の元に匿名メールが届く。〈預言者の遺体ほしければ、ここにこい〉楢原は指示された場所に行く。
 そこは、2025年の万博会場跡地だった。今は国際観光拠点となっていて外国人が大勢いる。そこで、ある老人と出会う。
 「私がDDを作った。そして気づいた。死者の思念には共通する信号があることに。それは、死を受けいれる安らかな思いだ。死、それは人類にとって幸せなことだ。DDはAIに繋がっている。AIは、人類にとって死が一番シアワセだと判断する。私は人類の救世主になるんだよ。始まりは2025年の万博だ。そこで、君に会った。これが預言者の残留思念だ」老人が言う。

『2075年人類は滅亡する。死者の夢を再生してはならない。死者の夢が核戦争を引き起こす。俺はその死者に殺された』

楢崎は、この声に聞き覚えがある。そして、老人の前に横たわる預言者の冷凍保存遺体の顔を見て驚く。
「俺じゃないか!」

そのとき世界中のAIが人類に安らぎの死を与えるために核ミサイルを全て発射する。
 眩しい白い閃光に包まれて楢崎は意識を失う。

【2025年】
 楢崎の意識が戻ると、そこは2025年の日本だった。彼は預言者となりDD技術の元がある万博会場に行く。それを破壊しようとしたところで、歴史改変を拒むある力が働いて楢崎は排除される。

文字数:1196

内容に関するアピール

未解決事件を未来の技術を使って解決する、という着想で考え始めたストーリーです。考え進むにつれて人類は滅亡して無限ループになりました。実作は、死者の残留思念を記録するDD技術のエピソードを増やして、事件捜査への利用エピソードも追加して、五十年後の未来をリアルに描きたいと思います。そして、殺されたのは自分だったんだ! という楢崎の驚きを、読者さんにも驚いてもらえるように書きたいと思います。
 一年間よろしくお願い致します。

文字数:210

課題提出者一覧