誰かさんの悪い記憶

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梗 概

誰かさんの悪い記憶

中村和也は小学生のときクラスメートの携帯電話を盗んだと疑われる。自分は盗んでいない! と何度言っても誰も信じてくれない。唯一、クラスメートの片桐だけは和也の言うことを信じてくれた。数日後、携帯電話が発見される。和也は無実が証明されるが「僕の言うことなんて誰も信じてくれないんだ。自分は一生、人から怪しまれる人間になる」というトラウマを心に焼き付ける。実は携帯電話を盗んだ犯人は片桐だった。

和也はトラウマを心に抱えたまま三十五歳になっている。片桐と同じ会社で仕事をしている。
 いつまた人から疑われるか、そのとき自分の言うことは信じてもらえないだろう、という不安の中で和也は生きてきた。このトラウマを克服したい、と片桐に相談すると、ある治療法を進められる。

そのころ『犯罪者心理研究所(犯罪者の記憶の中から、犯行当時の脳内意識をデジタルデータ化して、犯罪者の心理を調べて、犯罪抑制につなげる研究をしている機関)』がハッキングされて犯罪脳データ(殺人犯のデータがほとんど)が漏洩するという事件が発生する。それから暫くして、犯罪者の気分をリアル体験できる疑似犯罪アトラクションが、悪趣味な人たちの間で流行する。もちろんこれは非合法で、運営しているのは犯罪脳データを盗んだ闇組織だった。闇組織は、犯罪脳データと、それを自分の脳にアップロードできる装置を闇ルートで希望者に販売して高い利益を得ていた。

和也は片桐から勧められたトラウマ克服の治療を受けに行く。その治療とはリアルな殺人を行う夢を見せらることだった。和也は驚き戸惑う。そのことを片桐に言うと「あれは暴露療法という治療法で、殺人犯に疑われる恐怖を心に植えつけることによって、人から疑われる恐怖に慣れる。その結果トラウマを克服できるんだよ」と説明される。和也は片桐の言うことを信じて何度も治療に通う。

和也が治療を始めて一ヶ月ほど過ぎたころ、あるマンションの一室で、死後一か月以上過ぎている女性の他殺体が発見される。そして、和也が容疑者として逮捕される。和也の携帯電話(一ヶ月くらい前から紛失していた。実は片桐が盗んだ)が犯行現場に落ちていた。和也は犯行を否認するけれど誰も信じてくれない。そして、犯行現場、殺害方法は、暴露治療のとき見せられるリアルな夢と同じだった。何度も治療を繰り返しているうちに、その夢は現実の記憶として和也の脳に移植される。いつしか和也は、自分が本当に殺人を犯したんだと思い始める。そして、自白して裁判では無期懲役の判決が下る。

女性殺害の犯人は片桐だった。片桐は、犯行時の自分の脳内データを闇組織に売り渡して、和也を騙して犯行時の記憶を和也の脳に移植して、和也を犯人にしたてあげた。
 疑似犯罪アトラクションをした人には殺人の記憶が植えつけらる。その結果、脳に異常をきたして本当の殺人者になる人が続出する。その中の一人に片桐は殺害される。

文字数:1200

内容に関するアピール

自分にとって一番怖い物って何だろう? と考えると、お化け、ゴキブリ、静電気など、まあいろいろとあるんですが、怖さの本質というと冤罪ということが頭に浮かんできます。幸いにしてまだ実体験はありませんが、無実の罪を着せられ、本当のことを言ってるのに誰も信じてくれない、という状態は本当に怖いと思います。それから、信じていた友人から裏切られる、といのもかなり怖いです。この怖さと、他人の記憶を移植できるSFガシェットを絡めて、こんなストーリーにしてみました。

文字数:225

課題提出者一覧