梗 概
LiS.(Life is wonderful.)
逃げろ。ひたすらに走れ。
「宇宙船で引っ張れるサイズなら塵から星までなんでも運びます!」がモットーの運び屋アズマは、全速力で逃げていた。
隣を走る相棒ムサシは「だから言ったでしょう!」とゼーハーと舌を出しながら四本の足で割れた大地を蹴っている。
その背中の輿に担いでいるのは華奢な身体にエメラルドの瞳を持った美少女ライフ。
つまりは『充電型生命』だ。
三人(正確にはひとりと1ワンダフル星人、1ライフ)を追っているのは元ライフの持ち主であるスイスラ星人の軍団で、捕まったら最後スイスラ星の地下にあるという巨大金庫にしまわれてしまうだろう。
自動操縦で宇宙船を呼び寄せ、どうにか脱出に成功するアズマたち。
特殊な接続ユニットで繋ぐと自分の寿命を延長することができるライフは希少価値、値段共に馬鹿高い。
(ユニット自体が高価なので、アズマのような労働者層はライフを所持していても意味がない)
今回はアメリキ星人からの依頼でライフを盗まれたので取り返してほしいということだったが、ライフによると依頼主もまた別の持主から盗んでいたことがわかる。
自分が持っていても仕方ないが寿命を伸ばしたい気持ちはわかるので、アズマはライフを本当の持主であるライフ開発者に返すことにする。
報酬が高額だからと危険を承知で受けた仕事だったためムサシは反対したが、最終的には生涯の相棒の絆があるため承知してくれた。
「そもそもアズマは自分の命を軽んじ過ぎます」とムサシのいつものお説教が始まったが、はいはいと受け流すアズマ。
自分の命なんて惜しくない。忙しない毎日を超高速で飛び回れればそれでいい。
自分の1/4程度しか生きられないムサシの命だけはちょっと延ばしてほしいけれど。
スイスラ、アメリキ星人に追われる身となりながらも、アズマはどうにかジャパナ星人の元にたどり着く。
しかしジャパナ星人は働き過ぎですでに虫の息。
ライフとの再会とほぼ同時に死んでしまう。
「時間がほしい。それがこの人の口癖でした」
ライフは緑の瞳から涙を零す。
零した涙からは植物が芽吹き、あっという間にジャパナ星人の身体を大地へと還していく。
好きで働いていたのならいいが、無念を残したようなジャパナ星人の死にアズマはもやもやした。
それでよかったのか、あんたの人生?
このままジャパナ星にライフを置いていってもよかったが「せっかくならオレたちと有意義な時を過ごすか?」と、アズマはライフを連れて宇宙へと戻る。
ライフがいてもユニットがないのでムサシの寿命を延ばすことはできない。
けれどそこに命という存在があるだけで刹那的に生きていた時間が惜しく感じられた。
相変わらず運び屋は続けているが、アズマはどう時間を使うを意識しながら1ワンダフル星人1ライフとの旅を楽しんでいる。
文字数:1138
内容に関するアピール
テーマは『時間の過ごし方』です。
夢中になっていると時間はとても短く感じ、無為に過ごしていると長く感じられる。
前者は充実していて、後者は空しくなる。
そんな時間の密度と体感とを、冒頭からジェットコースターの最高地点にいるようなスピード感で描ければと思っています。
逃げて、逃げて、また逃げて。
たどり着いた場所に目的のものがなくても違うものを見つけてまた走り出す。
宝探しをいつまでも続けていたい。
実作では読了後もそう感じてもらうことが目標です。
人間(人種によって星が異なる)や動物が同じ立場にあるという世界観も、ユーモラスに描きたいです。
文字数:265