三姉妹戦記

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梗 概

三姉妹戦記

人工子宮により生殖が管理されてから五百年。女性の子宮は退化し、機能しなくなった。

砂漠にある王国の、美貌の王妃カリーアは、不思議な夢を見るようになった。怪鳥チャラナが夜な夜な現れて乳を吸うのだ。

頭部が鳥で身体が人間の怪鳥チャラナは、九九九年生き、子宮を司る神として崇められていた。命と引き換えに願いを叶え、乳を与えるとその力を増すと言われていた。しかし子を産まなくなった女たちから母乳を吸えなくなった怪鳥は弱体化し、力を失っていた。

夢を見てから七日後、王妃は妊娠した。女性の体内で生命が誕生するのは数百年ぶりだった。

出産当日、王は突然現れた老婆に「これから生まれてくる子によって王は殺される」と予言され、不死の呪いがかけられた。

王妃は三つ子を産むが、死産だったと伝えられ悲嘆にくれる。しかし王妃の忠実な家臣によって救い出されていた。それを知った王はすぐに家臣を殺した。

子が救い出されたことを知らない王妃は、あまりにも深い哀しみによって老婆のような風貌になった。王妃を疎ましく思うようになった王は、王妃を城から追放した。そして王妃の妹を妻に迎えた。

怒りに駆られた王妃は怪鳥のいる〈燃える湖に泳ぐ山〉へ向かった。死を覚悟した王妃は燃える湖を越えることができ、山頂を目指した。王妃は復讐を祈願し、毎晩怪鳥に乳を与えることを条件として、闇と破壊の力をもらう。王毎夜王妃と怪鳥は交わり、毎朝子を産んだ。王妃は子と共に世界を破壊していった。

一方、王は不足する兵士を補うため、人工子宮をフル稼働させ次々と戦闘用の人間を量産し、戦死させた。恐怖政治と紛争で民は疲弊していった。

予言する老婆によって救われた三つ子は、人里離れた森で育てられた。三人には不思議な力があり、老婆の指導により力に磨きをかけた。

長女トラソルは罪を食べることができ、戦意を喪失させることができた。トラソルの前に差し出された罪は浄化され、恥が一掃されて新たな成長を与えることができた。

次女ヘカテリアは死者と対話し、黄泉の国から呼び起こすことができた。また怪力の持ち主で、自然を操ることができた。

三女ナフィギーヌは欲情を操ることができた。ヴァギナ・デンタタ(歯のある膣)があり、性器から毒虫を出すことができた。

ある晩、王妃とその子により森が焼き払われ、逃げ遅れた老婆は死んでしまう。育ての親を殺された三姉妹は、実の母とは知らず、王妃を討つことを決心する。

王妃と三姉妹の戦いは地上を焼き尽くした。ついに三姉妹は王妃の首を落とした。

そこへ怪鳥が現れ、王妃が実の母であること、王の悪行を三姉妹に告げる。怪鳥は三姉妹を誘惑するが、三女ナフィギーヌによって撃退される。

怪鳥によって三人の生存を知った王は、軍隊を差し向ける。次女ヘカテリアは死者の大群を呼び起こし、それに抗した。長女トラソルは、王の罪を食べた。すると王の不死の呪いが解かれ、死んだ。

人工子宮を取り戻した三姉妹は、それを民に返還した。

文字数:1217

内容に関するアピール

妊娠中、赤ちゃんがお腹のなかで伸びをしてお腹が押され、足型が見えたときに私はぞくっとしました。お腹にいるのは一体何だろう、その存在のなんと生々しいことだろう、と。ここまで原始的で、いきものであることを実感できる体験はありませんでした。生殖医療の発展により、この原始的な出来事が切り離された世界では何が起こるのだろう、というのが発想の起点です。

この物語は、人工子宮によって女性の子宮が退化した世界で、罪を食べることができる長女、黄泉の国から死者を呼び出すことができる次女、欲情を操ることができる三女が、子宮を取り戻していく、ダークファンタジーです。三姉妹の戦闘シーンをその能力を活かした形で魅力的に描いていきたいです。

文字数:308

課題提出者一覧