ジャンルSFは多様です。宇宙に行ったり未来に行ったりロボットを出したりするのもよいですが、どこにも行かずロボットも異星人も未来人も出てこなくても、SFは成立します。ただ、SFがSFであるために必要な要素が、ひとつだけあります。それは「センス・オブ・ワンダー」、すなわち驚きの要素です。
そこで次回は、みなさんに、その「驚き」を世界設定というかたちでつくってほしいと思います。
次回の梗概では、現実とは異なる「変な世界」を設定し、その世界を舞台に物語を考えてみてください。一部の登場人物が特殊な能力をもっているというような設定ではなく、作中の世界全体が、現実世界とは異なる条件の世界になっており、その条件を前提にすべての登場人物のドラマが展開するような作品を求めます。ただし、その「変な世界」に生きる登場人物に現実世界の人間が接触するという物語の場合には、現実と地続きの世界設定に生きる登場人物を出してもかまいません。
参考文献に挙げたロバート・L・フォワードの『竜の卵』では、物語の(半分の)舞台は中性子星で、その設定のおかげで奇想天外なドラマが展開されます。とはいえ、設定は必ずしも「科学的」に作られている必要はありません。つまり、ハードSFである必要はありません。「変な世界」の条件がそれ自体としてきちんと整合性がとられていれば、物理的に不可能な世界設定でもかまいません。むしろ、「もし世界が・・・だったら」という奇想のジャンプ力に期待します。
センス・オブ・ワンダーに富んだ作品を期待します!
東浩紀から参考文献
ロバート・L・フォワード『竜の卵』
大森望から参考文献
アイザック・アシモフ「夜来たる」
池田香代子再話、C.ダグラス・ラミス対訳『世界がもし100人の村だったら』