梗 概
魔法少女症候群
ある時、突如東京に現れて激しく交戦した二体の魔女は、相討ちとなって六本木ヒルズへ墜落した。
以来日本では、若い女性に限って特殊な能力を発現する通称”魔法少女症候群”と呼ばれる新人類が発生した。
”魔法少女”となり得る因子は15歳未満の全ての女性に備わっていることが判明している。
だが全ての女性に発現するわけでもなく、何が要因で発現するのか解明されていなかった。
主人公 カスミは、生まれる前に起きた”魔女事件”をおとぎ話のように聞いた育った女子高生。
彼女はヒルズの魔女を世界を救ったヒーローだと信じ、いつか自分も魔女のようになる夢を抱いている。
ある日、街中に突如ワームホールが出現するという未知の災害が東京を襲う。
混乱する街中で無力さを感じながらも何もできずにただ逃げるカスミ。
そこへ両親から「親戚のケンタおじさんと連絡が取れない」という一報が入った。
幼いころから可愛がり、魔女の話も教えてくれた大好きなおじさんを助けたい一心で、カスミは混乱の中へ逆戻りする。
不思議な直感に従うと、カスミは自身の内に湧き出る新たな力に気づく。
勢いのままに踏み込むと信じられないような距離をジャンプし、カスミはその瞬間に魔法少女となったことを自覚した。
辿り着いた先、六本木ヒルズの中央ホールにケンタはいた。
逃げ遅れた人達を誘導していた彼は、ビルの崩落により一緒に閉じ込められたらしい。
魔法少女の力で人々を助けたカスミは、最後にケンタとともに脱出しようとする。
すると、新たにワームホールが発生して二人は窮地に追い込まれる。
そこに圧倒的なパワーで事態を収束し、二人を助け出す存在が現れた。
彼女たちを救ったのは、長年のフリーズから再起動したヒルズの魔女の片割れだった!
二人を安全なところまで移動させた魔女はカスミ に目もくれず、ケンタへと声をかけた。
…ケンタと”ヒルズの魔女”は、かつて将来を誓い合った仲だったらしい。
遺伝生物学者であるケンタは、彼のたてた「仮説」をカスミ に話す。
”魔法少女症候群”は人類が得た新たな進化因子が発現した結果だと。
それは個体の強い意志を汲み取って新たな能力が備わるように、 生殖における”母体” となる女性にのみプログラムされた万能遺伝子。
カスミが”魔法少女”の力を得た理由は、彼女の「自分も”ヒルズの魔女”のように世界を救いたい」という願いが、今回の危機に際して因子と反応したから。
そしてフリーズしていた魔女が再起動した理由は、魔女がかつて願ったことが「幼なじみのケンタとその世界を守ること──自分と彼がいる世界の平和」だったからだ。ケンタの身に危険が迫った今、彼を助けるためにフリーズが解けたのだという。
魔女の活躍を聞いて育ったカスミ が、新たな魔法少女となった。
きっと今回の彼女の活躍を見ていた誰かがいるはずだ。その誰かは カスミ の姿を目に焼き付けてこう思うだろう。
「あんな風に、誰かを救える存在になりたい」
魔法少女因子は、強い願いによって発現する。 魔女が願い、 カスミ が継いだ想いが連鎖する。
人々の願いが正しい方向を向き、強い意志を持つ限り、人々の未来は明るいだろう。
文字数:1281
内容に関するアピール
テーマは「誰かの成したことは、時や地域を超えてでも他の誰かに強い影響を与える」です。
行動や思想もそうですし、創作作品もその範疇に入るでしょう。
強い意志のもとに発したアウトプットは、それを受けた誰かにとっての福音となり、動機となり、根拠となります。
そうしてその誰かが動くことによって、またそれを受け継いだ誰かが新しい何かをはじめます。
その連鎖は正しいものですし、それによって人の未来は進んでいくのだと思います。そういうテーマを意識して物語を組み上げました。
前向きで明るい雰囲気のまま終わるように心がけました。
ちなみに裏テーマは「メジャーなジャンルに自分なりの裏付けを考えてみよう」です。
オーソドックスな魔法少女モノに理屈をつけてみました。
ヒルズ魔女事件以降に生まれた女の子に魔法少女症候群が発症したのは、元々潜在的には人類にその因子が発生しかけていたが、魔女事件を情報として得たことで母体内で因子が活性化し、次世代(それ以降に生まれた子供)は因子を持って生まれたという設定です。
文字数:438