梗 概
ゴールドラッシュ
入星管理宇宙ステーションでカシマがコールドスリープから目覚めると、彼の故国は滅んでいた。今から200年ほど前、金の含有量が極めて高い惑星が見つかり個人や企業は採掘のため多くの人員を送り込んだ、惑星間移動ではコールドスリープが用いられた。カシマは現場監督として送り込まれ金採掘の指揮をとり、地球へ送り出す任に就いていた、80年ほど前に任期が終了し地球への帰路へついた。そして入管宇宙ステーションで目を覚ました。入星審査官より、カシマの故国が滅んでしまったこと、金の含有量の高い惑星が複数発見されたため金の価値が暴落してしまったこと、そのせいもありカシマの勤務先であった共立鉱業も倒産してしまったことが伝えられた。カシマの持っている故国の貨幣は失効しており、カシマが個人的に持ってきた金にもほとんど価値がなかった。カシマのような境遇の人は数百万人にのぼり今後も増加すると予想されていた。母国が現存し、住民データが残っていた場合は帰国できる場合もあったが、多くの人々は受け入れられる国がなかった。彼らはコールドスリープ難民と呼ばれた。
カシマは入星管理センター第四宇宙ステーション出張所へと送られることとなる。そこでは再度コールドスリープをするか、労働するかを選ぶことができた。カシマは労働を選んだ、内容はコールドスリープ施設の掃除であった、若干の賃金が発生し、地球への旅費としようとしたが、不法滞在の恐れから難民に地球へのビザが発行されることはほとんどなかった。そしてカシマもコールドスリープを選択し、無期限の眠りへとついていった。
レアメタルを掘りに行った人々の持ってきた金属の多くは希少価値が下がっているか代替物質が見つかっているかで価格が暴落してしまっていた 、数十年から数百年前から来た無一文の人々を受け入れる国はなく多くはカシマのように再度眠りにつくか、帰国できても現代社会になかなか馴染めなかった。一方、レニウムだけは依然希少価値が高く、宇宙船に対する需要から高値で売れた。レニウムを運んできた者はどの国でも歓迎され、それぞれの国で財産を築いた。その一人であるエリセイは資産の多くを人類の精神転送の研究に投資していた。肉体を放棄し、意識をデータ化し集合的にハードウェアにアップロードすることで人類は仮想空間で半永久的に生きることができる。エリセイはこの研究で難民問題が解決できると考えていた。しかしその研究が完成した頃、精神転送を選んだのは多くがリベラルな現代人であった。また人類のデータを保存するためのハードには多くのレアメタル、特に金が必要であり難民たちの仕事が非常に役に立った。現代人が徐々に仮想空間へと行き、地球に人が少なくなった頃、カシマたちは眠りから覚め地球へと帰り、自分たちの文化を再形成し暮らし始めた。
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内容に関するアピール
テーマは「人は未来へ行けるのか」です、wikipediaによると、自分がゆっくりと変化することや意識の低下などにより、変化を意識していないうちに周囲が変化していってしまうことも「タイムトラベル」と呼ぶならば、ウラシマ効果、コールドスリープ(冷凍睡眠)や重力ポテンシャルの高低差を利用することにより不可逆的に未来へ行くことは理論上可能らしく、人間は身体的には未来へ行けるようになるみたいです。しかし、行ったところでスムーズに未来で暮らせるのかという疑問が湧きます、1人だけだったら物珍しいこともあり受け入れてくれそうです。ではそれが数百万から数千万人だったらどうでしょうか、未来人も簡単には受け入れにくそうです。また過去から行く人の属性も問題になりそうです、年齢、性別、職業、資産…
今回の梗概では人が未来へ行くようになった時代の社会的な問題とその解決策を考えてみました。
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