梗 概
ある砲手
第一次世界大戦の最中、一人の青年がオーストリア・ハンガリー帝国軍の志願兵としてクラクフへと向かった。
そこで青年は「福音書の男」と仲間から呼ばれた男と出会う。
青年と男は巡視船の中で哲学や宗教について語り合い、
とりわけ言語哲学において全く新しい思想を模索していった。
しかし、戦火が激しくなるにつれて青年は自殺を試みる。
同じように自殺を考えていた男は、彼に手持ちの本を無理やり貸すことによって自殺を先延ばしにさせることを考える。
さらに男は彼に一冊のノートを手渡し、そこに本の感想を書くことを勧めた。
「この本がいっぱいになって、それでも死にたかったら遠慮なく死ぬがいい」
男はそう述べると、青年が書いた感想の横に男もその本についての感想を書くことを告げる。
こうして二人の男による読書ノートが次第に出来上がっていった。
そんな中、二人がいる隊に砲撃で聴力をほとんど失った砲兵部隊将校がやってくる。
帰還傷病兵として二人の乗る巡視船で故郷まで護送されることになっていた将校は、
子供の頃から紙に書かれた文字を食べるとそこに書かれてあることならどんなことでも理解できるという秘密を二人に打ち明けた。
二人は試しに自分達がこれまで読んだ本のページを男に食べさせ、
それが間違いのないことだということを確認する。
食べさせる本が尽きて、とうとう二人は自分達の読書ノートを男に与えることにした。
二人が今読んでいる本でどうしても理解出来ない問題があったからだ。
将校は立ち所にその問題を解くと、二人に対して次の本を求めた。
もう彼に上げられるものがなくなり、恐ろしくなった二人は作戦司令室に忍び込んで、
敵国の暗号文を男に与えるように同僚を抱き込んだ。
彼らとその将校によって次第に敵国の作戦が暴かれ、彼らの乗った船はその強襲をすんでのところで回避する。
無事彼の故郷についた三人は、世界中の暗号文を解読することによって三人が憎むこの戦争を終結へと導いていった。
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