作品プラン
≪絵に描いた火 ―21世紀のネット社会における、“炎上職人見習い”の葛藤≫ステートメント
現代版マッチ売りの少女は、正直、儲かる。
私は炎上職人見習いだ。炎上とは、ある言動が注目を集め、批判や誹謗中傷が殺到することをいう。表現の自由の上で成り立つ、民主主義の象徴。ブログやSNS、掲示板などのネット上で見られる。
朝は火種を探す。誰のどの話題が一番、燃えやすいか。どんな火事を記事に起こせば、最もインパクトがあるか。不倫、不祥事、不謹慎。目星をつけたら、とりあえず叫ぶ。
「火事だー! ○○と△△が××したぞー!」
本当は分かっていない。そこに火事があるのかどうかすら。でも、心配することはない。野次馬が集まってコメントを投稿すれば、人だかりができて、中心なんて見えなくなる。そうしたら、火事が起きているように見えてくるから。
最初は張りぼてみたいだった火も、みんながマッチに火をつけて集まってくれれば、本物の炎になり、炎上の出来上がり。
「嫌い」「どうでもいい」「人として最低」ありがとう。「気持ち悪い」「信用できない」ごちそうさまです。
私は放火魔ではない。炎上職人見習い、Webライターだ。ただ、威勢のいい野次馬を集めて、ストレスを発散させているだけ。他人が他人に向けて書いた悪口は、お金になって、私のご飯になる。
炎上の火を絶やしたら、現実世界が燃えてしまうかもしれない。だから、次々と張りぼての火を描く。いつまでも描く。火劇に結末をつくってはいけない。
本当は言いたい。「その火は私が今朝描いた、張りぼてなんです」。うまく火がついたらご飯が食べられるけれど、本当は気付いてほしい。
人の頭にかけられる、消火器があればいいのに。私は悪いことをしている気がする。
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