争いの国

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梗 概

争いの国

国の中にあるモノが総て丸い、マルという国名の国がある。マルの国では、自然にある木や草や石までの総てが丸の形をしているのである。建物も乗り物も、その国の中で作られたモノは総て丸の形にしか出来上がらないのである。

 同じような国があと二つある。一つは、国にあるモノの総てが三角の国、サンカクである。もう一つは、国にあるモノが総て四角の国、シカクである。

 マル、サンカク、シカクの国は、それぞれ他の二国と隣接しており、国の大きさ(領土)は三国が建国した当初は同じ大きさであった。また三国とも領海を持たない国である。

 マルの国には5人の人間が住んでいる。

 サンカクの国には6人の人間が住んでいる。

 シカクの国には12人の人間が住んでいる。

 三国の人間は人種による違いはないが、思想信条には違いがある。

 世界は、マル、サンカク、シカクの国である。つまりこの世界には海がなく三つの国があるだけである。世界の総人口は23人である。

 それぞれの国から持ち出したモノは他の国に行っても形を変えることはない。

 

この三国、世界が成立した日から戦争をしている。なぜならば、マルの国には角のあるモノがなかった。角のあるモノ、もしくは角のあるモノを作り出すことが出来る土地が必要だったからである。同様にサンカクとシカクの国では曲線がなく、曲線を必要としていたからである。

 

 また信仰において三国は異なっていた。

 シカクは厳格な一神教であり他の国の神のありように不寛容だった。一神教による選民意識を持っていた。そして他の国を自国の宗教に勧誘する行動を繰り返していた。マルの国の国民は無神論だと誤解している国だった。サンカクの国の国民はアニミズムを信じる国だった。世界の半分以上の人間は一神教の神を信仰しているのである。

 

三国はそれぞれの国の人口についても思うところがあったのである。宇宙の果てにあったという文化のギリシア数字を崇めていた。彼らは12の公約数を好んでいた。2や3で割り切れる数字に好感を持つ文化であったのである。だからマルの国の国民でさえ、自国の人口5という数字に違和感を持っていたのである。

 

この世界を舞台にマルの国の首相とその無教養な家族、サンカクの国の独裁者と独裁者の椅子を狙う二人の家臣、シカクの国の不遜な大統領と倹約を美徳としすぎる狡猾な首席補佐官が、自国の利益をただ追求し続ける外交と戦闘を繰り広げる。

 

有利な土地、裕福な暮らし、私が信じる信仰。

多人口が戦争を勝利に導くのか。有力な資源がある土地こそが戦いの勝利を決めるのか。それとも向う見ずな正義感か。限られた役割の密接な関係性のなかで、世界で勝つとはどういうことなのか。何が必要なのかを書きだしたい。

 

 

 

 

文字数:1124

内容に関するアピール

人間は平和よりも争いを基本にプログラムされている生き物だと思います。それをどこまでも追及して、ただ動物的に、もしくはとても人間らしさを発揮した結果、ずっと戦争している人間たちを物語れればいいなと思いました。

三つの国をどのような国にすれば争わざるをえないような人間性が書けるだろうかと思い、三つの国にそれぞれ制約を作ってみました。物理的な土地や物体の問題がどこまで争いのもとになるのか、思想信条でどこまで喧嘩できるのかということを、すくなく濃い人間関係のなかで書きたいと思います。

 

文字数:240

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