テーマ

「悲劇~『この夏一番の泣ける話』ではなく~」

  • 課題提示、ネーム審査:武富健治
  • 実作審査:田亀源五郎
  • ネーム・実作審査:西島大介
  • ネーム・実作審査:さやわか

ネーム提出締切| 2017年8月12日(土)

ネーム講評会| 2017年8月19日(土)

完成稿提出締切| 2017年10月14日(土)

完成稿講評会| 2017年10月21日(土)

今回「物語」というテーマを頂き、改めて漫画家としての僕にとって「物語」とはなんだろうと考えてみました。
そもそも、漫画家が漫画を描きたいと思うきっかけ、漫画にしたいと思うものってなんでしょう?

最初期には、他の作家の作品を読んだり観たりして「自分もこういうのが描きたい!」という
素朴な真似心から湧いてくる漠然としたものかもしれませんが、次の段階ではきっと、
自分の胸の中にある、ある種の、えも言われぬ感情、表現欲求、これを漫画にしたいと思うものではないでしょうか。

しかし、漫画って本当に手間のかかる面倒な作業です。
そこまでして表現したい感情ってどんなものでしょう?

それは、両親にはもちろん、友人にすら、言葉で話してもなかなか伝わらないような、
ややこしい感情ではないでしょうか。
数字で例えると、「1でもなく2でもなく、1.2でも1.3でもない、1.2573…」みたいな。
これを中途半端に話すと、「ああ、1.3でしょ」とか「1.2の話ね、わかるわかる」と軽く見積もられて、
いい加減に同情されてしまったり、批判されてしまったり…。
「そうじゃねえんだよ。そういうんじゃねえんだよ」
余計に鬱屈がたまってしまったりします。

そういうややこしい感情を、わかりやすく、誤解少なく、より多くの人に共有してもらえるようにする
非常に有効な「装置」、
これが【物語】=ストーリーなんじゃないかと思うんです。

それなりにややこしい感情でも、世代が近かったり、生育環境が近かったりすると、
ある一定数の人には、そのまま吐きだしても「わかる」と言ってもらえるかもしれません。
しかしここはもう少し欲張って…というかむしろ、読まされる多くの読み手や、それを届ける出版社などのことを
考えて、ということでもいいのですが、「メジャー」を意識して、作品にしてみましょう、という課題です。

物語化(=メジャー化)した、えも言われぬ個人的な感情、
これをとりあえず「悲劇」と名付けてみました。

しかし、悲しい話でなくても構いません。
読者の胸にせまるものがあれば、最終的にハッピーエンドでもいいですし、
怒りや虚しさ、寂しさなどを扱っていてもいいのです。
それこそ、泣いたらいいのか笑ったらいいのかわからないような複雑な感情こそ、
味わってみたい気もします。

ただ、「こういう話、泣けるよね~」というパターンで、
心にもないものを手先で器用にこねてそれっぽく作ってほしくはないんですよね。
そういう意味で、【「この夏一番の泣ける話」ではなく】というしばりをつけました。

でも、ほんとに涙が止まらないような短編を作ってきていただいても全然構いませんよ。
作家自身の内部から出てきたものだという実感さえ伴えば、
むしろそれが最高かもしれません。

メジャー(普遍)化を考えるとき、二つのことを考えると、上手くいくんじゃないかと思います。

ひとつは、違う世代や、違う性別の人の心にも届けられるための装置(演出)

もう一つは、オタク、漫画読みなど、コアな漫画ファンでなくても受け入れられる舞台設定
僕の仕事の中では、「掃除当番」「屋根の上の魔女」あたりの短編集が、
参考になるかもしれません。

受講者全員が、プロ漫画家を目指すわけではないと聞いていますが、
今回は一つの実験、経験として、そんな「ストーリー漫画」を作ってみましょう。

16ページという制限の中では、なかなか難しいと思いますが、
どうぞよろしくお願い致します!(武富健治)

課題提出者一覧