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「物書きとしての自分の武器を考えてみる」

  • 長谷敏司
  • 塩澤快浩 (早川書房)
  • 大森望
  • 課題提示、梗概審査:長谷敏司
  • 梗概講評:塩澤快浩(早川書房)
  • 実作講評:新川帆立
  • 実作講評:髙橋裕介(ストレートエッジ)
  • 梗概講評、実作講評:大森望

梗概提出締切| 2024年11月15日(金)

梗概講評会| 2024年11月22日(金)

実作提出締切| 2024年12月20日(金)

実作講評会| 2024年12月27日(金)

みなさんと講師として何年もおつきあいさせていただいていて、さまざまな適性、特徴、パーソナリティの受講者さんと出会ってきました。
その中で感じるようになったのは、講座が終わった後、2年、3年と、書き続けてゆくことの難しさです。
素晴らしいセンスの持ち主、確かな文章力の持ち主が、講座が終わって発表の機会が減ったことで、あるいは仕事環境の変化などで、講座中と比べると大きく原稿生産量が落ちるということが、起こっているように思えます。

この現象は、小説との関わりは人生のおりおりで近くも遠くもなるものなので、適切な原稿量になっている、人生にとってプラスの変化であることも多いはずです。
また、成功して編集者さんとの付き合いができた場合、修正などでやりとりが入るため、講座のときほどハイスピードでは回転しなくなることもあります。
ですが、それでもなお、物書きは、原稿を書かないと前に進みません。

人生の中で、テーマやモチーフやアイデアといった準備が思ったように進まないときや、作業時間がとれないとき、何を書いても今ひとつに思えるようなときは、当たり前にあります。
そういうときに、「物書きとしての自分の武器」、つまり、「自分のどんな特徴を読者さんに期待してもらうか」が確立されていると、そこを柱にして、書くサイクルを回せます。コアになる歯車のかたちと回転軸が決まっていれば、(錆び付いたり機械がゆるむ前に)トルクをかければ何か動くということだと思っています。

これは、何作も書くことによって見つけてゆくもので、ひょっとして今年の講座から書き始めたというかたにとっては、まだピンときにくいことかもしれません。

けれど、これを見出せているかどうかは、10年後に皆さんが書く作品にも、おそらくきいてきます。長く書き続けるかたは、プロになってもそうでなくても、一生、付き合ってゆく問題でもあります。
「あなたという物書きは、何者であるのか」という、物書きが向き合い続ける問いにつながっているからです。

まだ見つかっていない、まだおぼろげであるというかたが、ほとんどでしょう。

なので、課題として、「こうだと思った自分の特徴や得意なことを仮定して、この”仮の武器”を中心に、プロットを作ってみる」ことをやってみてください。
「自分が武器だと思うもの」を梗概に短く書きそえてください。
それを一番活かすかたちで梗概を作ってみてください。

こうした武器や特徴は、自然に変わってゆくこともあります。皆さんの成長に合わせて、あるいは、時流に合わせて、何度も作り変えたり修正をかけたりしてゆくものだと思います。自分がそうだと想定していたものが機能しなくて、人から聞いた自分の姿を中心に組み直す場合すらあるでしょう。
なので、今回の課題では、叩き台くらいのつもりで、気楽に設定してください。
この話が効いてくるのは、すべてを注ぎ込んで1作、渾身の原稿を出した後、2作目以降(人によってはデビュー数年後のかたも)のことなので、気の長い話でもあります。

皆さんの長い旅のはじまりに、物書きを続けるなら一生付き合う問題について、考えてみてください。

 
(長谷敏司)

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