梗 概
カルアドラスから脱出
これは、宇宙監獄脱獄ものである。
〈登場人物〉
殺人犯、強盗犯、強姦魔などの凶悪犯であるが、主人公のモリは冤罪で義父殺しの犯人とされた40代の男性である。
〈背景〉
地球上で死刑制度は廃止され、その一方犯罪率は増加していた。世論は、犯罪者および刑務所・監獄に対する予算の大幅な削減を求め、死刑制度の復活を望む声も年々増していた。
〈新たな監獄〉
巨大な人工衛星型の宇宙船に終身刑以上の凶悪犯をつめこみ、100億キロ離れた惑星カルアドラスの周回軌道を宇宙船が壊れるまで、ぐるぐると回り続ける。周遊型監獄である。
宇宙船の耐久年数は100年程度で、収容人数は1000人ほどである。2畳ほどの個室にはトイレが設置されているだけだ。食事は最低限の栄養錠剤と液体錠剤が1日1錠自動的に支給される。刑務官はおらず、各房のドアは電子ロックで、地球から遠隔コントロールされている。ドアに何らかの衝撃が加わると高圧電流が流れるようになり、基本的には独房内にいることしか認められていない。船内には宇宙服も装備されておらず、船外に出ることは不可能である。
〈あらすじ〉
主人公のモリは、脱獄の方法を模索しながらも、義父を殺した真犯人の何らかの手がかりを思い出そうとする。宇宙船の燃料はおおよそ1年分で、燃料がなくなる前までに脱獄が成功できなければ生きて地球に帰ることはできないだろう。ロケットの通信機器を壊し、独房の電子ロックを解除させても、自分だけでなく、収容された他の凶悪犯が出てこられるようになる。自分だけ独房のドアを開けて外に出る方法はあるだろうか。
行き詰まったモリは、義父のことを思い出す。3年前に義母が亡くなり、義父はモリたちと同居することになった。義父は外を徘徊してしまうことが度々あった。妻は家のドアや窓に防犯センサーを取り付けたのだが、それでも義父は外に出ていった。どうやって?義父はテレビの音量が大きすぎて、家にいた自分も妻もセンサーの音に気が付かなったのだ。通信機にノイズを作り出したら、、。
モリは試行錯誤しながら、独房からでることに成功する。そして、操縦室に向かうモリに声をかけるものがいた。”おれをだしてくれ”無視していこうとしたが”おまえはモリだろ”と言われる。思わず足を止めたモリは義父殺しに関する話しを聞かされたことで、その相手ジョンを独房から出し、操縦室に一緒に向かうことに決める。
地球に戻るまでの燃料はもうなかった。かと言って、宇宙ステーションに監獄船が着いたら、通報されてしまうだろう。話し合う中で、ジョンはモリが宇宙船が旅立つときモリとその妻を見たこと、妻と同郷で、妻とその家族にまつわる話をした。ジョンは義母も殺されたと告げる。信じられないような話だったが、モリは妻と出会ったときから結婚式、一緒に過ごした日々を思い出す。自分はどこまで妻のことを知っていたのだろうか。
モリとジョンは、船内を探索する。緊急用の宇宙パラシュートを1つ見つける。ジョンは、それをモリに託す。無事地球に帰還したモリは、自分の家に辿り着く。妻の姿はそこになかった。周りに尋ねると、妻が自分の両親を殺した罪で自首をしたと聞かされる。
モリは、義父がよく徘徊した丘の上に義父母の小さな墓を作る。空には、天の川が見え、宇宙ステーションが流れ星のように見えた。
〈シーン〉
地球で妻と主人公モリが別れるシーン、宇宙船内の様子を観察しながら(義父との思い出を中心に)地球での生活を回顧するシーン、宇宙船内で脱獄を実行するシーン、宇宙パラシュートで地球に帰還し家に戻るシーンで構成されています。
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