梗 概
失われた場所を求めて
※この文章は本文ではなく、説明書です。
・これは、“現在”を探す体験型の物語です。ただの読み物ではありません。
家の中で地図やスマホを見ながら一人でくつろぎながら読むこともできますが、電車や車に乗って旅をしながら、歩きながら、読む方法がおすすめです(以下は、実際に旅をした場合の説明になります)。
・物語は、各都道府県にちなみ47種類あります。あなたはきっと興味がある都道府県名の書かれた封筒を取ったことでしょう。封筒の中には2冊の冊子が入っています。「過去日記」と「未来日記」です。それぞれに短い物語が書かれています。
・「過去日記」では、物語を読み、特定の場所を探すことが目的になります。その場所は、すでに失われている何かをあらわす場所です。史跡や遺跡にもならず、ある生物が生息しなくなった場所や何らかの理由で集落のなくなった場所など様々です。
例えば山梨県の封筒だった場合、県内のどこかの場所が目的地になります。その場所を探すためのヒントが「過去日記」の中に書かれています。「過去日記」は一つの物語になっていますが、誰かの日記や手紙、実在の人物の物語、その地域の伝承、歌われた場所など様々なものが含まれています。もしあなたが読み解き、その場所までたどり着けたら、そこには必ず黄色いポストが一つあります。黄色いポストの地点から、専用アプリをダウンロードすればARでその当時の景色を見ることができるでしょう。もしあなたが「過去日記」を通して、そこに住んでいた生き物や人々に気持ちを動かされたら、この黄色いポストに手紙を投函してください。どこかでメッセージが届くかもしれません。さあ、ここからは「未来日記」を開いてみてください。
・「未来日記」は、現在よりおおよそ百年先の世界です。「未来日記」は未来の観光ガイドブックさながら、百年先に予測される有力な観光資源や環境資源、産業資源が紹介されています。「過去日記」とは打って変わり、新しいご当地グルメや観光地の発見を楽しめることでしょう。もしかしたら、この旅が魅力的な場所を見つけることになり、あなたが移住するきっかけになるかもしれません。
しかし、「未来日記」の本当の目的は、観光を楽しんでもらうことではありません。「未来日記」には、今現在の栄えている産業にも陰りが生じ衰退していくさま、人の移り変わりが描かれています。また「未来日記」の主人公には、「過去日記」の主人公の子孫や関わりのある人々は誰も出てきません。というのも「過去日記」の人々の多くが断絶してしまっているためです。「未来日記」の本当の目的は、あなたが旅から帰り、家に帰って来た時に分かります。
「未来日記」の留意点を一つだけ書いておきます。「未来日記」の描写は、過去から現在までに残された100年分の地域データを読み込んだAI予測を基に作られたものですが、あくまでもフィクションであり、将来必ず起きることと勘違いしないようにしない下さい。あくまでも予測される未来の一つとして楽しんでいただけると幸いです。
・「過去日記」、「未来日記」と読み終え、旅を終えたあなたは、家に帰ると黄色いポストから黄色い手紙が返信されていることに気が付くでしょう。手紙の中の便せんには“私たちの痕跡を残してほしい”とお願いが書かれています。これをどうするのかが最後のタスクとなります。
・この物語には現在がありません。現在がエアポケットのように隠れています。「未来日記」の目的それは、過去と未来をつなぐ路を見つける―現在を考える、ことなのです。
文字数:1460