(666日)のプランポ

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梗 概

(666日)のプランポ

 ライシア合衆国(USR)は人口3億、世界随一の超大国。
「俺はUSRから花粉症を無くす!」
 2028年。花粉症根絶を唱えて不動産王プランポ(76歳・政治経験皆無。重い花粉症。以下PP)が大統領選に出馬。
 国民病=花粉症に悩む人は多く、「花粉症を放置した現政権は屑」と罵るPPは政治に絶望した若者を惹き付けた。
 第50代大統領となったPPは大統領令を濫発。

1)「花粉症の特効薬も作れない無能は国から去れ!」
 製薬会社の法人税を爆上げ&薬価の大幅引き下げ。

2)厚生省のサイトで花粉症に効く民間療法(漢方、整体、灸、波動水、甜茶等)を紹介。科学的な療法は「効果がない」ので情報削除。

3)花粉症の原因:スギ、ブタクサ、イネ科など数十種の植物を根絶。摂取すると花粉症を引き起こし易いから小麦も廃棄!

4)花粉症根絶局(EHB)を新設。

 EHBの命令下、爆撃機からの焼夷弾と陸軍の火炎放射器で森林と穀倉地帯は炎上! 周辺の街に延焼するも、PPは「大義の前には些事だ」
 ブレない指導者に国民(除・被災者)は熱狂!

 飼料が枯渇し、牧畜業者は、飼育中の動物が餓死する前に全出荷!
 USRの食卓からパン、米、麺類が、遅れて卵と肉類と乳製品が消えた。
 検閲下のマスコミとSNSに「新しい食生活は花粉症とダイエットにも効く」と賞賛が溢れ、異論は同調圧力で封殺!

  ※コーラと刺身が主食のPPに影響は皆無(一般的なUSR国民は水産物を食べない)

「気温の上昇で花粉が放出される。花粉症根絶には気象制御だ! 降雨は花粉の拡散抑止に有効だ!」とPP。
 凍素爆弾で北海を凍らせ、寒冷な海流を近海に誘導。USR全土の気温は常に15度以下に!

 かくしてUSRで花粉症患者が激減。
 一方【何故か】うつ病、ノイローゼ、栄養失調の患者と自殺者が急増。
「前政権の愚劣な政策が未だ国民の心身を蝕み続けている!」
 PPは議会で演説。青白い顔の議員らは拍手で応えた。

 2030年。新種の感染症が地球規模で蔓延。
 製薬会社の倒産で、USRの遺伝子工学者、薬学者らは海外に流失。
 国内産の卵は皆無でワクチンを作れず(そもPPは厚生大臣に、反ワクチン主義者を任命)。慢性的な栄養失調で抵抗力がないUSR国民は感染症で次々と斃れた。

 他国に救援を求めようにも、花粉症根絶に予算を割く為の海外援助全廃&WHO等の国際機関を全て離脱&協約の一方的破棄で、USRの国際的な信用度はゼロ。
 花粉症を根絶できぬ他国を罵倒したPPの過去の発言も災いし、USRを救援する国は絶無。

 超大国は急速に瓦解、あっさり滅びた。

 尚、数々の施策でもPPの花粉症は完治せず、むしろ呼吸器の炎症が悪化し、重篤化。感染症に誘発された喘息発作も重なり、PPは執務室で孤独に事切れた。
 在任期間666日目の事だ。
 獣の如き男が奇しくも獣の数字を体現したが、無神論者のPPには屈辱的な見立てだろう。

文字数:1200

内容に関するアピール

 題名は映画『(500日)のサマー』より。

 私は科学を信じ、差別を否定しますし、自らの失敗を反省する謙虚さを持っているつもりです。
 だから科学を否定し、デマをまき散らし、自分の誤りは絶対認めない差別主義者、そんな老人が超大国の指導者に就いて以降、彼のニュースには日々うんざり。
 なので今回のお題に『(同案多数と危惧するも)彼をネタに!』と真っ先に決定!
だが肝心のお話作りに苦戦!

 

 トランプ台頭の予言的SF短編と評される『アメリカの壁』を参考に読むも『小松左京の壁』を痛感。却って行き詰まる。

 そんな時、特別授業に出席の同期達に「次の梗概は?」と尋ねると、谷江リクさんから「環境テロリストが、花粉症撲滅の為にテロを起こす話を考えてます」と聞き、 「あっ花粉症のトランプってありかも!」と閃き、今回の話をでっち上げた次第。
 リクさんに最大級の感謝を!

 寓話というには露骨な内容なれど、それも味かなと。

文字数:398

課題提出者一覧