梗 概
快男児キャプテン・スペースの転落と復活
ソル歴2321年。宇宙の快男児キャプテン・スペース(31歳/以下、CS)は、太陽系政府転覆を謀る宿敵・ゲルマー(33歳)を、火星のオリンポス山頂に追い詰めた。
対峙した二人の銃から発せられるビーム。一瞬早く、ビームに胸を貫かれ、体勢を崩したゲルマーは、火口へと落下。だが落下前に、ゲルマーは指輪を操作し、付近に敷設済みの反物質火薬に点火!
大噴火を始めるオリンポス山! かろうじて宇宙船に逃げ込むCSだが、噴火で愛機諸共、木っ端微塵に……
西暦2190年。人類の火星入植から1世紀余り、火星人口は3百万に達していた。
弱小デブリ回収会社の社員兼社長・アリス(45歳)は、小型ポッドからドローンを操作し、火星の衛星軌道上の宇宙デブリの回収中。操船AIが、針路上に高エネルギー反応の出現を、アリスに警告。直後、前方にまばゆい発光!収まると、前方の空間に涙滴型の物体が、唐突に出現。
アリスは、物体にポッドを接舷させ、移乗。物体の表面は高熱に曝されたか、方々が溶け、穴だらけ。穴から侵入したアリスは、かろうじて気密が保持された区画で、気絶した男を発見。男は、大昔のSFコミックの登場人物のような仰々しい格好だ。
「独りハロウィンでもしてたの? イカレてるね~」
呆れるアリス。
病院で意識を取り戻した男は、事故?のショックで虚構と現実を混同しているのか、「CS」と名乗る。そんなふざけた名前の人物を、火星と地球の戸籍バンクで検索できなかったのは当然としても、過去50年分の出生時遺伝子パターンの記録にも『該当なし』なのは奇妙だった。
火星の管轄省庁との責任の押し付け合いを経て、結局、男はアリスの預かりに(男が乗っていた物体を、スクラップ業者に売り飛ばしたアリスには多少の罪悪感があった)
『働かざる者食うべからず』が社是のアリスは、試しに男にポッドを操縦させると、抜群の腕前。男を採用し、二人三脚でデブリ回収業に勤しむ。男は生気なく、
「あぁ~太陽系を縦横無尽に飛び回ってた俺が、何でこんな地味な仕事を……」
と時折『妄想』を呟くが、腕前は確か。アリスは気にしなかった。
火星財閥の御曹司(♂)が、アリスの会社を訪問、男との面会を希望する。御曹司は、亡き祖父のビデオレターを持参。彼の祖父ゲルマーは、火星の最初期の入植者で、一代で財をなした立志伝中の人物。ゲルマーの名を聞いた瞬間、激しく動揺する男。アリスは心配し、同席。
映像の老人は病床にあるが、不敵に嗤う。
「CS、お前がいつかこの宇宙に現れた時に備え、この映像を残す」
「『地獄』へようこそ!」
「だが儂は地獄を生き抜いたぞ。お前に出来るか?」
男の眼に、初めて生気が宿るのを見て、アリスは驚く。
「ハッ、お前に出来て、俺に出来ないことがあるか! 俺も地獄を生き抜いてやるよ!」
男の瞳が燃えた。宇宙の快男児の復活だった。
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内容に関するアピール
「自分の武器」かは不明なれど、幼少期にアニメ『キャプテン・フューチャー』を毎週、夢中になって見たこと、長じて後、E・ハミルトンの原作小説20冊余りを読破したことが、自分のSFの原点の一つであり、SF観を構成しているかと。1940年代に発表された小説なので、今の目で見ると、相当に厳しい処もありますが、幾つかのアイディアは今でも通じると思っています。
また私は劇場で、映画を年100本程度、観る人で「この映画を下敷きにこう改変すれば、小説になるんじゃね?」と常に妄想しています。
古き良きスペースオペラへの愛と、題名は伏しますが、最近観た邦画を悪魔合体させたのが本作です。
CSの視点で物語を進行するのが常道ですが、あえて別人物の視点で進めてみるという、自分なりの実験をしました。その為、作中、説明不足な箇所がありますが、察して!(ヲイ)
なおCSが生まれた宇宙のオリンポス山は休火山です(笑)
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